基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

水滸伝 一/北方謙三

あらすじ
十二世紀の中国、北宋末期。政治は腐敗し、民は苦しんでいた。
腐敗した政治を倒そうと、志を胸に漢達が立ち上がった。

感想 ネタバレ無

お、面白すぎる。20巻もあるというのに(文庫で)1巻だから、まぁまずは各キャラクターの顔見せとかかな、なんていう軽いジャブじゃない。

ド真ん中ストレートで1巻目から最強に面白い。死ぬ前に読めて良かった。
20巻てよく考えてみればラノベでもそうそう20巻続いてる作品なんて無い。しかもそのあとにもまだ話が続いているという。

というかそもそも水滸伝という話を、ジャイアントロボでしか知らない、ていうかまったく知らない状態で読み始めたのだがまさかこれほど楽しめるとは思わなんだ。読む手が止まらない。というか巻が変わっても止まらない。ぐいぐい引き込まれる。これからこのブログは北方水滸伝に埋め尽くされるであろう。

これから20巻も、北方水滸伝の世界に浸っていられるのかと思うと心が躍るわ。すでに手元には20巻分の北方水滸伝がある。あるいは途中で止まるかもしれないが、読むのが楽しみである。

しかしただひとつ重大な欠点があるとすれば、7巻だか8巻の帯で壮大なネタバレを喰らった事だ。恨んでも恨み切れない。なんというネタバレ・・・。たいていのネタバレは笑って許せるが、許せないネタバレというのもこの世界には存在するのだ。しかも帯に書くとか・・・。

さきに帯を読んでしまった自分が悪いのか。

内容的には、やはり一巻だけあって、まだ大きな物語の断片が語られたにすぎない。林冲魯智深史進など、のちのち活躍していく人間の運動の始まりが多少語られているにすぎない。ただ一巻の時点でほぼ50人近くの人間が登場している。やはり重要な巻なのだろう。

何より凄いのはどの人物をとってもつまらない人間がいないということだ。どの人間の視点になっても面白くて仕方がない。人間が増えれば最終的に100人を超す事になるが、それによる不安が全く湧いてこない。素晴らしい実力で書いていると感じる。というかそのすさまじさに声も出ない。読んでいて、あまりの凄さに芯から何かが込み上げてきた(言いすぎ)

むやみやたらにほめても凄いとしか書きようがないのでポイントを押さえてみようか。

まず第一に、数多くの人間が出てきているのに、つまらない人間がいない事が凄い。どの個人も機能的に生きている。作品の中で。というかみんな格好よすぎる・・・。思わず、か・・・かっこええと独り言を言うぐらい格好いい。

第二に、戦闘描写が思わずみいってしまうほどわかりやすく、伝わってくる。みいるというのは誤字ではない。本当に情景が頭の中に浮かぶだけじゃなく、間というものまでも伝わってくる。つまらない戦闘しか書けない人間が書いたものを読むと、経過はいいからもう結果だけ書いてくれればいいのに・・・といつも思うのだがむしろ結果はいいからずっと闘っていてくれればいいのに・・・という感じである。

第三に、単純ながらも魅せ方がうまい。強さを示すためにわざと弱いやつと闘わせたり、人間性をみせるためのイベントを設置したりと単純だが、だからか普通に響く。

第四に、リズムが崩れない。20巻もの長大な物語を書くというのに、そのリズムが一定してみだれない。あいにくまだ全部読んだわけではないので20巻最後まで全くリズムが乱れていないのかどうかはわからないが、3巻まで読んだ感触だとこの先もリズムは乱れないのだろうと思う。あるべき結末に向けて着々と進んでいる印象を受けた

あげればきりがないのでこれぐらいで。凄まじい小説だという事は繰り返し述べていきたい。

ネタバレ有

王進の漢っぷりに泣いた。内へ内へ向かうというのも別にわかるわけではないが、きっとこういうものだろうというのも、想像出来る話だ。親を大事にしている登場人物ばかりで心が痛かったりもする。

それにしてもここで目指している民が普通に笑っていられる世界っていうのは、今まさに日本の事だろうなぁと思うと少ししんみりだ。シュルレアリスムとは何か、で理想郷とはそのまま日本の事だ、という言葉があったが言われてみればそういう気もする。

今の日本を目指しているわけではないだろう。もちろん。ただこの状況を脱した後に待っているのも、日本のような状況だと考えると少し悲しくなってくるものがある。

王進と史進も最初の対決は本当に良かったなぁ。格好いいという他ないし、王進の強さが存分に書かれていた。

個人個人も水滸伝の大きな魅力かもしれないが、その実、一番の魅力は登場人物の多さによる、関係性の多さかもしれないと読んでいて思った。王進と史進史進と盗賊3人衆。安道全と白勝と林冲。その他いろいろな関係性がある。そしてそのどれもがどうしようもないほど格好いい。

これほど関係性というものを意識したことはなかった。それはやはりこういった多数の人間が入り乱れる小説でしか生まれてこないものだろうか。ともおもったがどこを重視するかによるのだろう。

王進システムはいいなぁ。もはやシステムになってしまっている。

それから、どの場面のどのセリフをとってもほとんど無駄なセリフというのがないせいか、どこを読んでも、みんな志というものを持っているのだなと意識させられる。書いている意味がわからないが・・・。なんというか芯というか、筋というか、キャラクターの中に存在する真中のものが設定されている、と読んでいてわかる。作者がそういう風に考えて書いていないと、伝わってこないだろうし、そもそもかけないだろう。

好きなシーン

史進と王進の別れのシーン。
お前と私が別れても、お前の心の中に私は生きている、とか王進じゃなきゃ言えないぜ・・。

鮑旭が、王進と王進の母に人間のように扱ってもらえて、うれしくてやべぇ!となっているところ。ほんと王進格好いいな。

それから、安道全が白勝と林冲のことを友と認めて、死にそうになっている白勝をなんとしてでも助けようとして雪の中手術するところとか、というかその一連の流れ全部だ!

やばすぎる。面白すぎる。こんな感想書いている暇も惜しい。さらばだ