- 作者: 藤原伊織
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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コテコテのハードボイルド小説
ハードボイルド小説というと自分はレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』しか読んだ事がないので実際のハードボイルド小説というのがどういったものなのかわからないのですが、この『テロリストのパラソル』に関して言えば、コテコテだなあという印象を持ちました。主人公であるアル中のバーテン島村は仲間のためなら自分が罪を負う事もいとわない上に女にはめっぽう優しい、というよりも他人に対して自分を犠牲に出来る男です。さらに相棒役のヤクザの浅井。浅井は女を売ることとヤクを売る事は絶対に許さない、これまた仁義をわきまえていらっしゃる。それからヒロインは勝ち気で事件に積極的に介入してくる21歳で、ハードボイルドォー! という感じ。(意味不明)
説明が長い
角川文庫版である本書は全部で378Pあるのですが、正直冗長にしか感じられませんでした。その理由として、説明が異常に長い、ということがあげられるかと。たとえばあの人間はこういう思惑であいつはこうで〜と全員の動きを主人公が全部喋るのですが、ひたすら長い。主人公の頭がキレる演出でもあり、さらには状況を読者にわかりやすくするためだというのはわかるのだけれども…。それだけならまだしも、会話の端々で豆知識が挿入されることがよくあってそれがリズムを破壊している。相棒であるヤクザが何か喋ると、主人公が俺には自衛隊に長いこと所属していた知人がいてな…と語りだすのですが、唐突だし意味がわからないし興味がないしで非常につらかった。ノベルゲームにおけるTIPSってあるじゃないですか。物語の補足説明的な(人物の過去とか、地名とかを説明するあれ)もの、あれが全部本編の中に挿入されている感じ。こういうの全部削ったら三分の一は減らせるんじゃないかなーと。
恋愛方面が皆無
ヒロインは出てくるんですけどね。恋には発展しないときたもんだ。それから主人公、三ヶ月間もの間同棲していたという女性の話が出てくるんですが、これがまた性的な話が一切出てこない。誰も女の話をしないし、そういった部分が皆無。徹底的に男臭いものです。ハードボイルドといえば自分はクールな主人公が
主人公「女? 仁義に比べればゴミだねっ」
ヒロイン「そんなところがカッコメェーン!」
みたいなやりとりをするのが常だと思っていたのですが、この作品…というよりも、この作者においてはそうではないようです。ラブとかそういったものが決定的に欠如している。まあだからなんだというわけではないんですが。違和感も特に。