基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

水滸伝 四/北方謙三

水滸伝が 面白すぎて 読むペースと感想を書くペースの釣り合いが取れていない件について。


感想 ネタバレ有

そろそろキャラが多くなってきて、どれがどの勢力だかわかりづらくなってきた。しかし、一瞬わからなくなるだけで、少しでも読めば、ああ、あそこにでてきたあの人か、と思いだせるような書き方になっている。

さりげない心づかいがうれしい。というか面白い。やばいこれ。ナニコレヤバイデスワヨ。

激動の展開の5巻に向けての、準備の巻だったという印象が強い。まぁこれほど長い物語だ、そういう巻もあるだろう。ただその分しっかりと「志」各人が闘う理由が書かれていたり、さらに新しい人間が追加されたりしている。

それにしても王進システムが人間リサイクル機関ならば、宋江の旅は人材発掘隊だな。旅に出る理由は苦しい気がするが、どう考えても108人の人材を都合よく発掘させるための旅だろう。

読んでいて気付いたが、次の巻で壮絶に活躍するやつは前の巻から念入りに伏線が張られているか、大量に描写が入る。楊志しかり、林冲しかり。ただこれに気づいたのがいい事だったのかはたしてネタバレ並にひどいのかは少しわからないが。

もう何度も書いたが、本当に一人一人が格好いいのである。もうこれでもかっていうぐらい。雷横とかいう脇キャラがこんなに格好いいなんて思わなかった。

雷横が部下と一緒に逃げて、部下との深いつながりを示したシーンはボロボロ泣いたような気がする。(おい) 今ぱっと読み返してみても、あまり感動はしないが、流れで読んでいったときに雷横と部下との関係がキレイすぎる。汚いものなどなにもない。

そういえば北方水滸伝の、梁山泊108人、誰ひとりとしてつまらない人間がいない。現実ならば、割と性根の腐った人間もいそうなものだが、一人一人が圧倒的なまでの信念を持ってる。命乞いをするような人間が、一人もいない。そういった弱さ、というものを完全に排除しているのか。


 「老いとは、孤独なものなのですよ、宋江殿。出来のいい息子がいようが、やさしい娘がいようが、同じことです。ひとりで土に還る時を、待つ日々なのですから、その時、癒してくれるものを持つのは、その人の人生が豊かという事にならないでしょうか」


ふーんとおもったけど自分老いた経験がねえからわかんねえ!あと40年ぐらいしたらわかるかな?でも確かに、60や70になって、死が射程距離に入ったら、本当に孤独な気がする。異邦人でムルソーが、死刑宣告された時に来た救いを説く神父に怒りをぶちまけたみたいに、死のうとしている人間に救いなんて何の意味もないのかもしれない。本質的に孤独っていうのはそういう事か。

その時に死の恐怖をやわらげてくれる何かがあったら確かに人生は豊かといえるかもしれない。


 「自ら死のうなどという気はない。しかし、志のために私は命をいとうべきでもない」

宋江のセリフ。今のところまだ死んでいないが、いつか死ぬのは確実に思う。林冲が死ぬのを望んているような描写が大量に入るが、宋江も負けてない気がする。周りの人間が囃したてないだけであって。ただ確実に立派な最期を遂げるだろうという事がこのセリフから伝わってくるだけだ。それだけはわかる。
きっとそういう誰もが期待して、当然そうなるだろうという王道をどうどうと突っ切ってくれるから最高に面白いのだろう。

次への準備の巻という印象が強いが、主役をあげるとするならば間違いなく穆春と李俊だろう。この二人の見せ場は異常にかっくいい。


 「おまえらの命、この李俊が預かった」
 山寨に、百名のあげる声が谺した。


嫌が応にも燃える。かっけええええとがっつぽーずしたまま壁にぶつかっていきそうな気分だ。

この巻あたりから、死ねば土に還るだけ、というフレーズが増えてきている。後々重要になりそうな感じである。良く覚えておこう。