基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ガルパン・叛逆航路・早川書房

はじめに

冬木糸一が一月の間に読んだり観たりやったりした物を振り返るコーナー。

えー近況報告は特にないですね。10月はゲームをいろいろとやってあまり本が読めなかったような気がするけれども、11月はそこそこ読んでます。ただゲームもやった(the last of us)。あと今はFate/grand orderが(ソシャゲだけど)面白く、時間を吸い取られている。Fateシリーズという超強力原作を使って、しかも英霊はいくらでも増やせ、集めることに快楽が発生するのであまりにもガチャ形式とマッチングしている。さらには、ゲーム部分の作り込みがかなりいい。

ゲーム部分の面白さを解説しようと思ったけどまあ、そんなこと僕が書いたところで……っていうのはある。毎ターンランダムにカードが割り振られ、それを組み合わせて敵へのダメージとするランダム・カードバトルといってしまえばいいんだけれども、シンプルな画面・ゲーム構成を必要とするスマホゲーとして、非常にわかりやすく一戦一戦にそこそこの緊張感と快楽を発生させるようになっている。なんとなくグランブルーファンタジーも(パソコンにしか入れてないけど)ちょっとやってみたら、はじめて1週間ぐらいしてもルールがさっぱりわからんもんな。

オススメ小説フィクション

ダンゲロス1969

ダンゲロス1969

山田風太郎系能力バトル物の極北──『ダンゲロス1969』 - 基本読書
さあ、それでは10月読んだ中で特に面白かったものを振り返っていくが、まず一つは『ダンゲロス1969』ですね。これは凄い。エログロ系能力バトル、記事では「山田風太郎系能力バトル物」としているがこの表現が正しいかどうかは別として、その方向では随一の出来。オナホを操る能力者、地球に隕石を振らせて壊滅させられるほどの能力者、うんこを炎に変えられる能力者とあまりにもあんまりな能力者が目白押しで数十人規模の決戦を行うのだから、能力バトル好きとしては外せない一作だ。
叛逆航路 (創元SF文庫)

叛逆航路 (創元SF文庫)

Ancillary Justice by AnnLeckie - 基本読書
あとこちらは翻訳版では記事を書いていないけれど、アン・レッキーの『叛逆航路』。なにが凄いって、デビュー長篇なのにヒューゴー、ネビュラ、クラーク、英国SF協会、ローカス、英国幻想文学、キッチーズと名のある賞をとりまくった(7冠)こと。もちろん賞の多さが作品の面白さを保証するわけではないんだけれどもそれはそれとして面白いですよ。あとは、とっても変てこな状況を描いた話でもある。しかしそれが表現形式にも影響を与えて──とSFとしての面白さも保証しよう。

オススメノンフィクション

脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-

脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-

THE GHOST IN MY BRAIN──『脳はすごい -ある人工知能研究者の脳損傷体験記-』 - 基本読書
ノンフィクションはそれぞれの分野で豊作揃いなんでちょっと絞りきれないな。まず脳科学系でいうと一冊面白いのがあって、それが『脳はすごい』って本だ。人工知能研究者が交通事故によって脳震盪症にかかり、正常な思考と身体コントロールが不可能になってしまう──。たとえば車へ向かって歩くだけのことがどうしてもできない、町で見かけた店に入らずにはいられない(入る必要がないことは理性でわかっているにも関わらず)。それを研究者らしい理屈っぽさで逐一書き記し、最終的には最新の療法によってほとんど元通りにまでたどり着いてみせる。
意識と脳――思考はいかにコード化されるか

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

SFが現実化しつつある世を生きている──『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』 - 基本読書
同訳者の脳と意識の本では下記も素晴らしい。意識系の本って、一定数安定して売上がのぞめるからかそこそこ数が出ているようだけど、そうそう最新の知見が出るわけでもないからわりと似通ってしまっている。その点『脳はすごい』は意識を離れて脳の可逆性とかの分野に行っているのが楽しいし、本書は細かく意識の定義からそれを実証的に検証する過程が描かれている点がずば抜けている。
ハヤカワ文庫SF総解説2000

ハヤカワ文庫SF総解説2000

45年の歴史が一冊に──『ハヤカワ文庫SF総解説2000』 - 基本読書
あ、あと『ハヤカワ文庫SF総解説2000』が出ました。主に海外作品を(初期は日本作家含む)文庫で出してきたハヤカワ文庫SFが2000番を突破したお祝い企画で、SFマガジンで3号にわたって行われた特集を元にまとめられたもの。もちろん全てががっつり語られているわけではなく、ほとんどは340文字だけど、340文字であっても書き手の個性は出るので(140文字でも出るから)そういうのに注目するのも面白い。

次点

huyukiitoichi.hatenadiary.jp
ハヤカワのSFコンテスト第三回が行われ、佳作受賞のつかいまことさん『世界の涯ての島』について書いてます。3つの視点が混在し語られていく多少複雑な構成ながらもすらっと読ませ、描写はいちいちエモーショナルでかなり短い作品なのだが、読了時の気分が良い。大賞受賞の『ユートロニカのこちら側』の方はKindleで買ってまだ積んでる(そのうち読む)。評価は高いので楽しみですな。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
ノンフィクションだと『動くものはすべて殺せ』が凄い。ベトナム戦争で米兵が「動くものはすべて殺せ」と命令され民間人を女子供含めて虐殺するということが「日常的に」起こっていたことを公文書から解きほぐしていく。これ、何がひどいってデータ分析で戦況を評価するってことをやりはじめて、その指標で最も重要だったのが「キル数」だったってことだ。そのせいで民間人を虐殺してベトコンに仕立て上げて報告する、そうしないと評価が上がらないしビールとかの支給にも響くからみんながんばってキル数を上げるっていう最悪の事態に。モチベーション・コントロールは効率的な組織運営の基本だがやり方を間違えると大惨事を招く好例といえるだろう。

ガールズ&パンツァー 劇場版

ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック

ガールズ&パンツァー 劇場版 オリジナルサウンドトラック

ガールズ&パンツァー 劇場版、ちょっとこれを同ベクトルで超えるアニメ映画は見たことがないレベルの作り込み。ストーリーは敵がきたぞーーー倒せーーーがほとんどだからストーリーレベルの作り込みではなく、全編を通して流れ続ける戦車戦のディティールが凄いのだ。地形効果、マップの面白さ、戦車毎の特性、戦術、戦略といった全ての部分が細部まで磨き上げられている。「マッドマックスFR」と比較されることが多い本作だけど、違いがあるとすれば戦車毎の特性やマップ特性を活かしきる戦術・戦略性の部分にあると思う。これはもっかい見に行きます。

ハヤカワのKindleセール

早川書房が70周年を記念してKindleセールをやっているみたいです。ブロガーとしてはここで「オススメ100選!!」とかぶちかましていくのが常道のような気がするんだけれどもあんまりそういうのは書いてても楽しくないからな、ということでここでオススメの数点だけ。一点は小川一水さんの天冥の標シリーズ。これは、マジで、ヤバイ。生まれてからこのシリーズに出会わせるまでにつらいことも楽しいこともいろいろあったけど、つらいことであってもこの作品に出会うことに繋がったんだから全てを肯定することができるようになるぐらい面白い。

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

huyukiitoichi.hatenadiary.jp
あともう一点は飛浩隆さんの『グラン・ヴァカンス』と『ラギッド・ガール』ですね。『ラギット・ガール』は僕が読んできたSF短編集の中では文句なしのベストだし、『グラン・ヴァカンス』はオールタイム・ベストの3位までには確実に入る長篇である。オールタイムベスト1,2,3位になるともはや作品の出来がどうとかじゃなくて自分の人生にいかに影響を与えたのかというえらく個人的な指標の勝負になってきてしまうから。そういう意味で言えば、ブログを書き始めるきっかけになった神林長平先生の『膚の下』もオススメしておきます。これほど衝撃を受けた作品はない。
グラン・ヴァカンス 廃園の天使?

グラン・ヴァカンス 廃園の天使?

ラギッド・ガール 廃園の天使?

ラギッド・ガール 廃園の天使?

膚の下(上)

膚の下(上)

膚の下(下)

膚の下(下)

これから読む本

これから何を読むのかといえば、山形浩生さん訳の『パクリ経済 コピーはイノベーションを刺激する』が面白そう。あと『生活世界の構造』も買って積んであるから早く読みたい。特筆すべきは円城塔『プロローグ』、ジーン・ウルフ『ナイト』あたりが一刻も早く読みたい感じだがちとやりたいことがたまっていてすぐには無理だ。既にボス級の本が並んでいるので、12月はすさまじいことになりそうだなあ。というところで今月もまた頑張っていきましょう。年を越すぞ~

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する

  • 作者: カル・ラウスティアラ,クリストファー・スプリグマン,山田奨治(解説),山形浩生,森本正史
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2015/11/26
  • メディア: 単行本
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