基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2016-01-01から1年間の記事一覧

2015年のSF短篇、めっちゃレベル高い──『アステロイド・ツリーの彼方へ (年刊日本SF傑作選)』

SF

アステロイド・ツリーの彼方へ (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)作者: 大森望,日下三蔵出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/06/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る本書は東京創元社にて出されている《年刊日本SF傑作選》の第9集である…

それでも宇宙は廻っている──『宇宙探偵マグナス・リドルフ』

宇宙探偵マグナス・リドルフ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー)作者: ジャックヴァンス,Jack Vance,浅倉久志,酒井昭伸出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2016/06/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る本書は異世界SF/ファンタジーの…

二つの世界を行き来する幻想ミステリ──『クララ殺し』

クララ殺し (創元クライム・クラブ)作者: 小林泰三出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/06/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『クララ殺し』は2013年に出た同著者の『アリス殺し』の姉妹編にあたる。続編といえば続編だが、登場人物が…

ブラックホール合体/衝突の歌──『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』

重力波は歌う――アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち (ハヤカワ文庫 NF)作者: ジャンナ・レヴィン,田沢恭子,松井信彦出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/09/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見る本書は発売(2016年6/16)とほぼ同日に重力…

ライフスキルとしての批評──『みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド』

みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド作者: アーロン・イリザリー,アダム・コナー,長谷川恭久,安藤貴子出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2016/05/24メディア: 単行本(ソフトカバー)…

人類社会と昆虫の多様な関係──『昆虫の哲学』

昆虫の哲学作者: ジャン=マルク・ドルーアン,辻由美出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2016/05/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る昆虫の哲学と言われてもいったいなんの事なのかよくわからないが、著者によれば次のように説明される。…

可能性の世界──『僕が愛したすべての君へ/君を愛したひとりの僕へ』

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)作者: 乙野四方字,shimano出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/06/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)作者: 乙野四方字,shimano出版…

老いゆくすべての人へ──『死すべき定め――死にゆく人に何ができるか』

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか作者: アトゥール・ガワンデ,原井宏明出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2016/06/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの世には避けられぬことというのがいくつもあり、そのうちの一つは死である。今の…

被創造物が創造者となる時──『風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake?』

風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/06/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見る森博嗣さんによるWシリーズの三作目である。もともとSFとしては非常にマイナーな、細…

人類進化に関するまったく新しい疑問とアプローチ──『人類進化の謎を解き明かす』

人類進化の謎を解き明かす作者: ロビン・ダンバー,鍛原多惠子出版社/メーカー: インターシフト発売日: 2016/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る考古学者は石器と化石の組み合わせや、発掘地の地質学によって「歴史」を浮き彫りにさせてきた。…

巨大人型アーマーを用いた宇宙空間チームバトル──『ストライクフォール』

ストライクフォール (ガガガ文庫 は 5-1)作者: 長谷敏司,筑波マサヒロ出版社/メーカー: 小学館発売日: 2016/06/17メディア: 文庫この商品を含むブログを見る2014年に出た『My Humanity』で日本SF大賞を受賞した長谷敏司さんの2年ぶりの新刊となる。まずそ…

物語には全篇を通じて音楽が流れている──『アルファ・ラルファ大通り』

SF

アルファ・ラルファ大通り (人類補完機構全短篇2)作者: コードウェイナー・スミス,伊藤典夫,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/06/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るコードウェイナー・スミスによる〈人類補完機構〉全短篇の…

コンテンツ業からサービス業へ──『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』

デジタル・ジャーナリズムは稼げるか作者: ジェフジャービス,茂木崇,Jeff Jarvis,夏目大出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2016/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るデジタル・ジャーナリズムが今ぱっとしないのはなぜなのか、そ…

剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)作者: モリー・グプティル・マニング,松尾恭子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/05/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る紀元前から人類は図書館と共にあったが、それは場所が戦地にあっても…

全人類が同時に記憶障害に陥ったら──『失われた過去と未来の犯罪』

失われた過去と未来の犯罪作者: 小林泰三出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2016/06/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら 『玩具修理者』や『アリス殺し』の小林泰三さんの新刊だが、こ…

正気と狂気がせめぎ合う場所──『ドン・キホーテの消息』

SF

ドン・キホーテの消息作者: 樺山三英出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2016/05/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る著者の樺山三英さんはこれまで『ハムレット・シンドローム』や『ゴースト・オブ・ユートピア』など、一…

ジャンルてんこもりの、幻惑小説──『虚構の男』

SF

虚構の男 (ドーキー・アーカイヴ)作者: L.P.デイヴィス,Leslie Purnell Davies,矢口誠出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2016/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見るこれはなかなかおもしろい、というか凄い本なのだが実に紹介しにくい…

翻訳出版が冒険であった時代──『翻訳出版編集後記』

翻訳出版編集後記作者: 常盤新平出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2016/05/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る常盤新平さんが「出版ニュース」にて1977年から1979年までにかけて連載されていた、早川書房で翻訳出版に携わってい…

吸血鬼×スチームパンク×探偵譚 ──『血と霧1 常闇の王子』

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)作者: 多崎礼,中田春彌出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/05/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見るかなり雰囲気/世界観が良い、というか手触りの良い作品である。いわゆる剣と魔法の世界ではないファンタジ…

「科学する人生」とは何か──『右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る』

右脳と左脳を見つけた男 - 認知神経科学の父、脳と人生を語る -作者: マイケル・S・ガザニガ,小野木明恵出版社/メーカー: 青土社発売日: 2016/03/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る著者であるマイケル・S・ガザニガは書名にも入っている…

数学が常に底流にある「ザ・シンプソンズ」──『数学者たちの楽園: 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』

数学者たちの楽園: 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るサイモン・シンの新刊翻訳といえばそれだけで買わないわけがな…

人間と機械の境界を探る──『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』

明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書)作者: 海猫沢めろん出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/05/18メディア: 新書この商品を含むブログを見るSR(代替現実)、3Dプリンタ、アンドロイド、AI(人工知能)、ヒューマンビッグデータ、BM…

人間はどのように世界のことを知ろうとしてきたか──『この世界を知るための 人類と科学の400万年史』

この世界を知るための 人類と科学の400万年史作者: レナードムロディナウ,Leonard Mlodinow,水谷淳出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログを見るつい先日『科学の発見』という、過去の科学者にたいして「科学…

千年の時をかけた義経の視点から振り返る義経記──『ギケイキ:千年の流転』

ギケイキ:千年の流転作者: 町田康出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/05/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『ギケイキ:千年の流転』は町田康によって書かれた義経紀である。時代/伝奇小説である。といえば、町田康の作風を知る人か…

今まさに創られていく神話──『罪の終わり』

SF

罪の終わり作者: 東山彰良出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/05/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る文明崩壊後の食糧難によって人肉食が当たり前になり、牛の遺伝子に人間の遺伝子を混ぜた「食用牛」を開発することでようやく飢餓から解放され…

暇と退屈の仕事論──『働くことの哲学』

働くことの哲学作者: ラーススヴェンセン,Lars Svendsen,小須田健出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2016/04/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る僕自身は働くということについて思い悩んだことはなく、「金は稼がなあかんのやから働か…

過去の科学者に現代の基準でマジレスする──『科学の発見』

科学の発見作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/05/14メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこれはまたけっこうヘンテコな──というか、あまりないタイプの科学史ノンフィクション…

世界はとても美しく、だけど破壊された過去で埋め尽くされている。──『パンドラの少女』

SF

パンドラの少女作者: M・R・ケアリー,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/04/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る書名からどんな本だかさっぱりわからんなあと思いながら読み始めてみれば、近年まれにみる引きこみの強さであっ…

なぜ疑似科学が社会を動かすのか

なぜ疑似科学が社会を動かすのか (PHP新書)作者: 石川幹人出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2016/02/16メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る「なぜ疑似科学が社会を動かすのか」という書名だが、これ自体はそうそう不思議なものではない。何し…

お金の何が、世界を"動かして"いるのだろう?──『貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで』

貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで作者: カビールセガール,Kabir Sehgal,小坂恵理出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/04/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る貨幣の歴史について語った本は数多い。それ…