基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

オービタル・クラウド by 藤井太洋

Gene Mapper -full build- (ハヤカワ文庫 JA フ 4-1) - 基本読書の著者藤井太洋さんによる第二長編がこの『オービタル・クラウド』になる。Gene Mapperの頃から何らプロと遜色ないレベルの小説を書き上げていた著者だがやはり全体を通してキャラクタの描き方…

ロケットガールシリーズ by 野尻抱介

SF

最初はライトノベルシリーズとして世に出たこのロケットガール。現在ハヤカワから復刊中だ。ずっと絶版だったので紹介できなくてやきもきしていたんだけど、このまま出してくれそうな雰囲気があるので安心して紹介できる。これ、元はライトノベル出身作品に…

創作の極意と掟 by 筒井康隆

たかだか作家歴20年ぐらいの人間が創作の極意と掟なんて本を出したらこいつアホか何言ってやがるとなるところだ。が、著者は筒井康隆だ。そりゃ極意といっても許されるというか、むしろ正座して背筋を伸ばして読むレベル。さて、どんな本なのか。文学部唯…

生きがいについて (神谷美恵子コレクション) by 神谷美恵子

昨日この本を読んだからというわけではないが、「若作りうつ」社会 (講談社現代新書) by 熊代享 - 基本読書今日は『生きがいについて』 by 神谷美恵子 初版は1966年。ちょっと昔の本になるが、ここで語られている生きがいについての話は現代に至ってなお…

「若作りうつ」社会 (講談社現代新書) by 熊代享

これは面白いと思った。仮題が『歳の取り方がわからない社会』だったこともあって、テーマが「いい歳のとり方」などのような狭いところにいくのかなと思っていた。が、かなり簡単にまとめてしまうと、実際には「本来年齢と共に変わっていくべきライフスタイ…

My Humanity by 長谷敏司

SF

長谷敏司さんによる短篇集。数々の傑作を送り出してきた長谷敏司さんだけど、短篇集ははじめてかな? 素晴らしいクォリティで、どれひとつとっても一筋縄ではいかなかった。人間性について「テクノロジーが拡張する方向」と「生物学的にみた人間の限界」の両…

作家を救う電子書籍という活路『ナナのリテラシー』 by 鈴木みそ

電子書籍漫画。背景真っ白、もしくは線だらけ。顔ドアップの連続でコスト削減極まりない。電子書籍出版で鈴木みそさんの実体験をベースにした漫画でさくさくと話を展開させていくので普通のストーリー漫画と同じ軸で評価するものでもない。まず本書では現状…

翻訳者エッセイは面白い

翻訳者エッセイは面白いよなあと日頃からぼんやり考えていた。なぜなんだろう。なんらかの理由はあるのだろうか。まずひとつ言えるのは、翻訳者は自身が訳す作品を「身体を一回通している」ということだ。批評家が一つの作品の取り組む大抵の場合よりも、翻…

スウェーデン・パラドックス by 湯元健治,佐藤吉宗

スウェーデンのような高福祉社会がいかにして回っているのかという詳細な制度分析を行っている一冊。いや、回っているどころではなく高い国際競争力を持つようになったのはなぜなのかといった分析まで行われている。教育が無償という投資に手厚い失業後の復…

夢幻諸島から by クリストファー・プリースト

SF

随分へんてこな小説だなあというのが一読しての印象。夢幻諸島なる不可思議な事象が発生し時間の流れすら一定になっていないという驚異的な島々を舞台にした話でSFというよりかはファンタジー的な読み味を感じる。ワンピースのグランドラインに点在するへ…

翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない (ちくま学芸文庫) by 永井均

何か真剣に物事を考えようという時に、立ち返る場所を得た。物を徹底的に考えるっていうのはね、こういうことなんだよと教えてくれる本だった。哲学とはなんだろうかと考えても「うーん、考えることかな。でも考えることが全部哲学っていうのもそれはそれで…

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) by 千野栄一

英語に限らず外国語の上達には「コツ」がある、それは何かというテーマで進められていく一冊。読んでみればはぁなるほどと思う内容ばかりで、合間に挿入される多言語マスタークラスのスーパーマンたちの逸話、名言も面白い。初出は1986年。言語は年月を…

兵士たちの肉体 by パオロジョルダーノ

これがまたヘビイな……ちょっとすぐには表現すべき言葉が見つからない、今まで読んできたものとは手触りがずいぶん異なる一作。割合たくさん読んできているのでそういう感想は珍しい。本作『兵士たちの肉体』はアフガニスタンに派兵されたイタリア軍の兵士た…

Time Warped: Unlocking the Mysteries of Time Perception by Claudia Hammond

ポットのお湯が湧くのを待っているのに、ただその目の前でじーっとしているとほんの数分が永遠のように感じられるものだ。一方でちょっと離れてパソコンの前に座ってメールのチェックでもしようものなら気がついた時にはお湯は沸騰していくらか時間が経って…

ビスケット・フランケンシュタイン〈完全版〉 (講談社BOX) by 日日日

『ビスケット・フランケンシュタイン』は2008年に文庫で出ていた作品の復刻版、完全版にあたる。長らく絶版になっていたとかで今回初めて読んだが、こうやって過去の名作が蘇ってくるのはいいことですね。文庫版については既にKindle化されているので現状手…

レッドスーツ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) by ジョン・スコルジー

SF

新☆ハヤカワ・SF・シリーズの☆ってなんだよと思いつつもイーガン白熱光に続き第二回配本を迎えたのがこの『レッドスーツ』。タイトルだけで意味がわからないし、驚くほどのセンスのなさだがアメリカのスラングでありちゃんと意味のある言葉だ。そして表紙は…

呼鈴の科学 電子工作から物理理論へ (講談社現代新書)

原子また原子、環また環と、論理の鎖はきたえられていく。いくつかの環はあまりに性急に、あまりにか弱くつくられたためにこわれ、そして、よりよき細工におきかえられる。しかしいまや、大いなる現象はすべて知られ、その輪郭は正しく確かにえがかれて、腕…

村上春樹さんの小説の記述をめぐってのこと

村上春樹「心苦しく、残念」町名変更へ 小説のたばこポイ捨て記述めぐり (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース下手な手を打ったなこれは、ということに尽きる。世界の村上とはいっても話題が盛り上がりに盛り上がった長編で300万部を超えるぐらい。短篇集…

不格好経営―チームDeNAの挑戦 by 南場智子

売れているビジネス書なんかクズばかりだし、経営者の本なんか胡散臭くて読んでられるか! と全力でスルーしていた本だったが読んでみれば意外と面白い。DeNA事業の宣伝はうざったいし妙な演出が気になるけれどアホみたいな方法論を偉そうに並べ立てたりせず…

論理トレーニング101題 by 野矢茂樹

多くのとーしろがゴミみたいな文章を発信して、普通にネットを見ていると否が応でもそれを目にせざるを得ない今日この頃、文章の中の論理を見極め詭弁を見極め文章に一体全体どれほどの説得力があるのかを見抜く力を育てるのは急務であることはいうまでもあ…

神雕剣侠 by 金庸

射雕英雄伝 by 金庸 - 基本読書の続編にあたる。登場人物が半分ぐらい共通していて十数年後という位置づけ。主軸は射雕英雄伝の主役たちの子供世代にうつっているので、本シリーズから呼んでも特に問題はないが、あまりお勧めはしない。その広がりと深さを増…

楽観主義者の未来予測 by ピーター・H.ディアマンディス,スティーヴンコトラー

そこまで良い本だとは思わなかった。そのほとんどは将来実現しそう、あるいは既に実現していることが今後どのような展開をみせていくであろうかという技術のブレークスルーについてのざっくばらんな紹介であり、著者は個別事例について別に専門家でもない。…