基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2012-01-01から1年間の記事一覧

都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代

本作は最初にこれから語られるショッピングモールと都市の関係について概観を示し、2章と3章でショッピングモールの起原とその後の歴史、4章で現在のショッピングモールを示すというオーソドックスな構成であまり突飛なところもありませんが、堅実で言っ…

天冥の標6 宿怨 PART 2:小川一水は人間が想像したことのない世界へ走り出してしまった

今、滅茶苦茶に広い宇宙のどこかで、人間が死んだり生きたりしている間もまるで関係をもたず、予想もつかない形で展開を続ける意識体が存在していたら──そしてそれが我々の太陽系にやってきて全く異なるそれぞれの目的を果たし始めたら、それに人間が巻き込…

屍者の帝国(ネタバレなしSIDE)

いまさら説明するのも野暮なほど有名になってしまった感があるが、今は亡き伊藤計劃が書いた30枚ほどの遺稿『屍者の帝国』をその盟友である円城塔が物語を書き継ぎ、完成させたものが本書である。本書は出版される敬意そのものが極上の物語であって、物語…

街場の文体論

内田樹先生の現時点での最新刊。内田樹論の文体論を超えて、コミュニケーション論の総括とも言える内容で、とても素晴らしかった。とても素晴らしく、だからこそ誠意を込めてこの本について説明する文章を書きたかったので、読み終えてすぐに文章を書くこと…

バースト! 人間行動を支配するパターン

人間の行動は予測できるのかと言えば、できないという人の意見が大半だろう。人間には物理現象がみせる決まったパターンは存在せず、思いつきで飲みにいったり、ふと思いついたことで行動を変えたりといった自由意志によるランダムネスが混ざるからだ、と。…

ビアンカ・オーバースタディ:時をかける精子&人類は衰退しました

あまりにもひどすぎる(褒め言葉)。『ビアンカ・オーバースタディ』はあの筒井康隆が書いた、当然ながら初めてのライトノベル。読み始める前は筒井康隆せんせも、もう77歳だ。とてもパワーが残っている年齢ではない。それにライトノベルを書く意図もよくわ…

清涼院流水ファンにオススメするダンガンロンパサーガ

ダンガンロンパというのは、2010年に発売された1と、今年の7月26日に発売された2を合わせたPSP専用アドベンジャーゲームのことだ。1と2の前日譚であるダンガンロンパ・ゼロを合わせた3つの作品を、ここではダンガンロンパ・サーガと読んでいる。…

学力と階層

内田樹先生の人参と鞭戦略による教育が失敗するという着想元はここだったのかという元ネタ的発見。「機会平等」によって誰しもが「努力すれば」平等に扱われる日本社会において、そもそもの「努力する才能」の部分に「出身階層」による「スタート時点におけ…

もっと勉強しておけばよかったと思った話

『学力と階層』という、学力における階層差が存在するのかを分析した本を読みながら自分が受けてきた教育について考えていた。小学校のときは楽しかったような気がするが、中学高校と上がるにつれて嫌で嫌でしかたがないものになり、なんとかして避けるべき…

ブラックアウト:1940年のイギリスから脱出せよ

いやはや大変いいものを読ませていただきました。10年に一度クラスのごちそうですよ(コニー・ウィリスの史学部シリーズは、30年で長編が3冊しか出ていない為)。本書『ブラックアウト』はSF作家として数々の著名作『航路』『犬は勘定に入れません』『ドゥーム…

HTML5とJavaScriptでスマートフォンゲーム作成! ゼロからはじめるenchant.js入門:短いコードでゲームを作る=魅了するライブラリ=enchant.js

いやはやこんな面白いものがあったとは。誰もがゲームをつくれる時代が、もうすぐそこまできているのかもしれないなと感じさせる一冊でした。enchant.jsとはHTML5+JavaScriptベースのゲームエンジンで、すべてのOS、スマートフォンで動作するアプリケーショ…

ダークナイトライジング

僕が読んでる二人の映画評のひとが二人共「ダークナイトライジング(笑)」みたいな感じだったからおそるおそる観たけど、これぐらいならぜんぜんいいよ! でも変なとこもいっぱいあるよねえ。僕はビギンズも観てないようなにわかファンなので正直、真剣に観て…

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

いつもだるいだるいとブログで書いている著者であることを知っているのでこの本も途中でだるくなって文が突然終わりを告げるのではないかと期待して読み始めたけどそんなことはなかった。なんか普通に構成もしっかりしていて、価値ある本にしようと感じられ…

ダーク・スター・サファリ ―― カイロからケープタウンへ、アフリカ縦断の旅

本書は作家のポール・セローがアフリカをカイロからケープタウンまで、飛行機を使わずにバスと鉄道を駆使して横断する旅行記なのだが、その密度に圧倒された。観光ツアーなどで安全な道、安全な食べ物、計画されつくしたパッケージングされた「なんちゃって…

ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」

『ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」』。著者はGoogleでソーシャルメディアの研究を主導し、現在Facebookに勤めているという、ソーシャルメディア畑の中の人です。GoogleからFacebookには人材がどんど…

アナログとデジタル

森博嗣さんの直近の著作に『常識にとらわれない100の講義』の中の一講義に「文系の人は、もの凄くデジタルだな、と思う」という話がある。これは森博嗣さんの著作の中でも割合繰り返し語られている話で、もう何度も読んだことがあるのだけど、その度に頷くこ…

ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

まったく異なる文化について知ることは楽しい。人生に対する考え方や、自分が人間としての常識だと思って当たり前のことがさまざまな違った道のひとつでしかないことを教えてくれる。本書はピダハンという特殊なアマゾンの一部族についての分析の本だ。彼ら…

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3

村上春樹さんのエッセイ。このシリーズ、大好きなんですよね。エッセイはお題が自由なだけに、書く方は結構難しいんじゃないかなって思うんですけど、村上春樹さんの書くエッセイは自然体のように見えるどうでもいいような内容で、でも読むとなんとなくいい…

寿命一〇〇〇年: 長命科学の最先端

よく「なんでもっと未来に生まれて来なかったんだろう」と考える。そしたら火星にいけたかもしれないし、ひょっとしたらもっと遠くまでいけたかもしれないし、いま・ここでは想像もできないような状況に立ち会えたかもしれないのにと。22世紀まで生きてド…

ソードアート・オンライン

なんかアニメもやっているし読んでみようかなあと思って手にとってみたら、これが大当たり。一日2巻ペースを貫いてさっき最新の10巻まで読み終えてしまった。最新10巻までで、四部に構成がわかれており、ストーリーがそれぞれ一区切り、という形になっ…

できるかぎりよいものをと心がけること

「シャワーを浴びながら歌をうたう。ラジオに合わせて踊る。お話を語る。友人に宛てて詩を書く。どんなに下手でもかまわない。ただ、できるかぎりよいものをと心がけること。信じられないほどの見返りが期待できる。なにしろ、何かを創造することになるのだ…

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

インターフェースデザインの心理学というタイトルから想像されるホームページやツールの具体的な制作論かとおもいきや、その中身は人の脳を分析して理解できるパターン認識の仕方や、『人は本来怠惰な生き物である』とか『近道は簡単に見つかるときしかしな…

OUT OF CONTROL

冲方丁先生の最新作。だが、過去ばらばらに書かれた短篇を集めて出した短篇集であって、「今」の冲方丁を知ることができる作品ではない。短編は全7篇収録されていて、あの天地明察の原型となった短編や、冲方丁自身を主人公にしたかのような短編があったり…

常識にとらわれない100の講義

『非合理な常識よりも、非常識な合理を採る。それが自由への道である。』と『自由をつくる 自在に生きる』で森博嗣先生は書いたが、本書はまさに「常識の中に非合理を見つけ出す」講義集である。100の講義とあるように、1つの発想に対して2ページ、それ…

満天の星と青い空

漫画家の西森博之さんの初小説。なかなかおもしろかった。宇宙から飛来した隕石に被着した、謎の最近によって地球上の金属はほぼ全滅! 文明は崩壊! きたる世紀末! 我らが主人公は感情をほとんど持たない空虚な人間中澤! 軽薄で楽しいことを追求するがち…

小説「おおかみこどもの雨と雪」 : 映画を観た人が脳内で映像を再生するための触媒

※総評 アニメに実に忠実な文章。アニメを観た後に読むと脳内でデジタルからアナログに変換され、映画館に行かなくてもほとんどおなじに体験なるからコスパ的に良い。ほんとに、まったく、忠実に文章にしているので、一場面一場面が明確にイメージできるから…

映画「おおかみこどもの雨と雪」

なんかほんとに良い映画だったんですよ。さっき観てきたんですけど。サマーウォーズや、時をかける少女をつくった細田守監督の最新作です。見終わった時にチンケな表現なんだけど、心が洗われるような気分になった。よく花粉症の時とかに、眼を取り出して洗…

非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門:シンプル・イズ・ベストとはこういう本のことだなあ

文章入門のたぐいは数あれど、本書ほど「ひとつの法則」のことしか言っていない文章入門はないだろう。多くの文章入門はやれ添削しろだの文章は短く区切れだのやたらと色んな規則を並べ立てまもらせることで名文がかけると信じこませようとするが、人間が一…

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論:評判がいいだけある。

なんとなくデザインの本をいくつか読んでみようかなと思い立ち、最初に読んだのがこの本でした。たぶん一番有名な本だけあって、デザインについて本質的かつ有益な一冊。「もうこれ読んだら他の本読まなくてもええやん」と思ってデザインの本をいくつか読む…

人類は衰退しました 7 : やはり田中ロミオは天才なのだ

ついに七巻かー。アニメも超おもしろいですし、僕の中で人類は衰退しました熱が盛り上がりまくってます。七巻もちょうおもしろかったのだ。田中ロミオは天才なのだ。あ、ちなみに表紙がとてもいいですね。なんか絵が変わっているけど、僕はこっちの絵も好き…