基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2013-01-01から1年間の記事一覧

微生物ハンター、深海を行く by 高井研

ずいぶん不思議な一冊である。真面目な内容に見えてくだけた文体かとおもいきや、一瞬で遠い生命の起源にまで思考を飛ばす。熱くて青い情熱が溢れんばかりとおもいきやその中に冷静さがある。まったくそそられないタイトルだが、本書は海洋研究開発機構(通…

有頂天家族 (幻冬舎文庫) by 森見登美彦

アニメをやっているからかなんなのか、Kindle版が150円ぐらいだったので買って読んでみた。とても愉快な小説だなあ。森見登美彦さんは、初期の方の作品しか読んでいないのだけれども、読んで印象がプラスされた。初期の頃の作品って、できそこないの現代版ド…

未来福音 - 劇場版 空の境界

本当に素晴らしかった。観終わった後、ずっと、とりつかれたようにこの作品について考え続けているもの。思い返せば七章の完結編をみたときもそうだった。もう何も手につかなくなってしまう。テアトル新宿まで朝早起きしてチケットが売り切れていないかどき…

物語におけるレビュー者の視点について

レビュー者の視点による差というものがどうしてもあるわけで、レビューを読むときはそれを自分に当てはめて考えなければならないよなあと考えていた(好意的に、レビューを自分にプラスにしようと思って読む。という極めて例外的な場合に限った話だけど)。…

思考都市 坂口恭平 Drawings 1999-2012 by 坂口恭平

ゼロ円ハウスや突然失業してもこれさえ持っていれば生きていける!!──『ゼロから始める都市型狩猟採集生活/坂口恭平』 - 基本読書、独立国家のつくり方 - 基本読書でその普通とはまったく異なる世界への視点を提供してきた坂口恭平さんですが、この『思考…

My Brief History by StephenHawking

車椅子にのって機械音声を話す奇っ怪な物理学者のことを知っているだろうか。生きている中では最も有名な物理学者といってもいいかもしれない。『“To my colleagues, I'm just another physicist, but to the wider public, I became possibly the best-know…

The Visioneers by W.PatrickMcCray

表題のVisioneerとは著者が創りだした造語で、「明確なヴィジョンのある」を指す"visionary"と”engineer”をかけあわせた言葉。発音がどうなっているのかよくわからない。そのまま読むとヴィジニアーみたいな感じでひどく語呂が悪い気がする。読んでいてずっ…

カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep (MF文庫ダ・ヴィンチ) by 森博嗣

一冊完結で、僕はこれ、大好きな作品。工学を使った人間の達成における醍醐味がある。言葉は数千年残ったりするが、物理的な仕組みで人間の寿命を超えて機能させることはなかなか難しい。しかし人間が出来る範囲を超越した仕事を機械に達成させることが出来…

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある by 岡檀

自殺の要因は数あれど、それを防ぐ手段というとぼやけたメッセージしかないのが疑問だった。「生命を大切にね」「生きていてよかった」みたいなメッセージを繰り返し繰り返し、どんなに素晴らしい文章や体験談で述べられても、実際にいままさに死のうかどう…

エリジウム

第9地区監督による最新映画。前回よりも予算が莫大にかかっているにもかかわらずプロットは微妙である。まあ自分で脚本を書いているんだから予算は関係ないはずだが、どうもね。元々の企画はもっと低予算で撮る予定だったというが、そっちのバージョンもみて…

ヴェネツィア 東西ヨーロッパのかなめ 1081-1797 (講談社学術文庫) by ウィリアム.H・マクニール

つい最近文庫化したばかりのようだ(20130919視点)。本屋でその印象的な表紙(カナレット画)に目をひかれて手にとって見れば、『世界史』のマクニールの本だった。『世界史』はたいへん素晴らしい歴史本だったけれど⇒世界史 - 基本読書、同著者による本書…

Once While Travelling: The Lonely Planet Story by MaureenWheeler,TonyWheeler

世界的なシェアを誇る旅行ガイドブックの出版社であるLonely Planetの創設者二人(夫婦)が書いた会社創設記。蔵前さんによる旅行人創設秘話が面白かったので⇒さて、それじゃあまた旅に出ようか。『あの日、僕は旅に出た』 by 蔵前仁一 - 基本読書洋書でも同…

Zシリーズ by 森博嗣

通称Zシリーズの名で呼ばれているのは森博嗣さんによる『ZOKU』『ZOKUDAM』『ZOKURANGER』の3冊の総称。シリーズ物ではあるが、登場人物の名前とある程度の設定が共通しているだけで、3冊にお話的なつながりはない。そして内容はアン…

森博嗣全シリーズレビュー

特に誰に頼まれたわけでもなくなんとなく森博嗣作品をこの数カ月で50冊ぐらい読み返している。ただ読み返すだけではあれなので、せっかくだしこのブログでエッセイを含んだ全シリーズレビューでもやってみようかと思った。別に何かを達成したいわけでもな…

森博嗣の浮遊研究室 MORI Hiroshi's Floating Laboratory シリーズ

ひょっとしたら森博嗣作品の中でもっともマイナ(少部数)なのがこの『森博嗣の浮遊研究室 MORI Hiroshi's Floating Laboratory (ダ・ヴィンチ・ブックス)』シリーズなのではなかろうか。残念ながら文庫化もされていない。Amazonにも中古ばかりで既に新品は…

1万円起業 片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法 by クリス・ギレボー

この手の本(事故啓発的ソフトカバー本)はあまり読まないんだけど、なかなか愉快なタイトルじゃないかと思って手に取る。貯金も、会社をやめる必要も、リスクを取る必要もなく、ごく少数の人間だけで運営し、お手軽に1万円から事業を始めて、それでお金を…

宇宙探査機 ルナ1号からはやぶさ2まで50年間の探査史 by フィリップ・セゲラ

仕事から疲れて帰ってきたが、Amazonから送られてきた本書を手にとって読み始めたら疲れが吹き飛んでしまった。何千万キロも離れた惑星へ向けて、人間が創りあげたシステムをあらゆる事態を想定して送り込む、気の入った仕事をしてきた人たちの達成を目の前…

作画汗まみれ 改訂最新版 (文春ジブリ文庫) by 大塚康生

もう誰もが読んでいるぐらいの本で、今更紹介も何もなさそうな『作画汗まみれ 改訂最新版』だけど、読んだらたいへん素晴らしく、素敵な一冊だった。ちなみに僕はアニメをほとんどみないのでこの大塚康生さんのことも今回初めて知るぐらいのドシロウト。なに…

オタク・イン・USA:愛と誤解のAnime輸入史 (ちくま文庫) by パトリック・マシアス

最近ちくま文庫から出版された本なのだけど、これがもう面白いのなんの。アメリカオタクたちがいかにしてオタクになったのか、というアメリカオタク史で、げらげら笑いながらどのページも読んだ。そうか……僕はずっと日本にいて日本での二次元文化の受け入れ…

An Economist Gets Lunch: New Rules for Everyday Foodies by TylerCowen

Food is a product of economic supply and demand, so try to figure out where the supplies are fresh, the suppliers are creative, and the demanders are informed. 経済学的に、需要と供給、かかっている「飯」以外のコストが値段に反映してくること…

さて、それじゃあまた旅に出ようか。『あの日、僕は旅に出た』 by 蔵前仁一

『旅行人』の発行人である蔵前仁一さんの本。とかなんとか書いている僕は旅行人(雑誌)を一度も読んだことがなかったのだけど、読み終えたら思わず片っ端からバックナンバーをあさりはじめてしまった。それだけでもずいぶん本書が楽しかったことがわかって…

傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫) by 伊達雅彦

本屋のしごとは過酷だなあ。『傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)』はどこかの本屋店長であった伊達雅彦さんによる書店奮闘記。傷だらけの店長という名のタイトル通り、上がらない売上に、万引きに、いらいらさせる顧客に、ずいぶん手ひどくやられてい…

人びとのための資本主義―市場と自由を取り戻す by ルイジ・ジンガレス

この前詰替え用のシャンプーをボトルに詰め替えていて、何年か前まではこの入れ替えがうまくいかずに手間だったのが、今はさらさらの粘性になっていてスムーズに入れ替えられるようになっていることに気がついて、資本主義ってすごいなあとおもったものだっ…

飛行機物語: 航空技術の歴史 (ちくま学芸文庫)

「なぜ飛行機は飛ぶのか」とそんなあまりにも単純な問いも、答えるとなるとずいぶん難しい。しかしそこには理屈がある。飛行機をつくりあげた人たちはみなその理屈に沿って飛行機を創りあげたのだ。翼の形にも理屈があるし、重量にも理屈があるし、それを動…

代替医療解剖 (新潮文庫 シ 37-6 Science&History Collect) by サイモン・シン,エツァート・エルンスト

サイモン・シンの文庫化だ〜〜! と喜び勇んで本屋に走り、文庫新刊の平台をさがしまわるも影も形もない。「え、もう全部売れてしまったのか!?」と検索機に打ち込むとたしかに出てくる。機械に示される表示に従って本棚の前にいくと、棚にぽつんと一冊ささ…

最高の効率で、最高の金儲けを『WORLD END ECONOMiCA』 by Spicy Tails

ぐあー最高に素晴らしい物語だった。終わった後の余韻も冷めやらずすぐさまこれを書いている。『WORLD END ECONOMiCA』は狼と香辛料などで知られる支倉凍砂氏シナリオによるサークルSpicy Tailsによる同人ゲーム(だけどAmazonで買える)で、月を舞台にした…

高天原探題 by 三島浩司

三島浩司さんによる小説新作の文庫。相変わらず不思議な世界観だ。突如現れる土の塊、その中に取り込まれる一人の人間、そこから出てくる不忍、こいつらは、人の「動機」を殺し、その現象はクビキと呼ばれる──と、え、え、それどういうこと、その発想はどこ…

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫) by レイモンドカーヴァー

村上春樹がせっせと訳しているのは知っていたけれど、読むのは初めて。実はレイモンド・カーヴァーの伝記がでていて、それを読んだらなかなか面白かったので小説を読んでみようと思ったのです(普通順番が逆だが)。で、これが読んだらやっぱり凄かった。凄…

The Smartest Kids in the World: And How They Got That Way by AmandaRipley

世界の教育を実際に自身の目と、生徒たちの目、それから先生への聞き込みによって生の情報を一覧する一冊。基本的に米国と他国(本書ではWorldといいながらポーランド、韓国、フィンランド+アメリカの四カ国しかみていないが)との比較考察によって米国がい…

Jack Glass (Golden Age) by AdamRoberts

“Your task is to read these accounts, and solve the mysteries and identify the murderer. Even though I have already told you the solution, the solution will surprise you.” 日本でいえば読者への挑戦状のようなものから本書は幕を開ける。冒頭か…