基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2013-01-01から1年間の記事一覧

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫) by コーマック・マッカーシー

SF

うげ、これはとんでもなく凄いぞ。ここまで徹底的に根こそぎ奪われた終末世界を書いた世界があっただろうか(いや、あるかもしれない!)。本作『ザ・ロードは』コーマック・マッカーシーの終末小説で、『悪の法則』という題名で先日映画が公開された。ただ…

アステロイド・マイナーズ by あさりよしとお

タイトルに入っているとおりに(マイナーズ)、かなりマイナな漫画作品である。あんまり売れない、というよりかは異星人とのコンタクトでもなく、派手な戦争があるわけでもなく、地味〜に小惑星で資源を掘ったり生活をしている人たちの鬱屈を短編形式で書い…

アリス殺し (創元クライム・クラブ) by 小林泰三

「アリス」とタイトルに入り、表紙の絵もそのまんま「不思議の国のアリス」のアリスそのものなのだ。ちょっとその直球さはどうなの、どうせたいしてアリスはそれほど関係してないんでしょう、と惹かれないタイトルに惹かれない装丁だったので、おもしろくて…

魔術から数学へ by 森毅

森博嗣さんの『キウイγは時計仕掛け』という作品における引用本。元々は『計算のいらない数学入門』という題名だったそうだが、こちらの題名の方がよりピントがあっていると思う。いわく説明のつけがたい本で、一言でまとめられそうもないのだが数学エッセイ…

物語ること、生きること by 上橋菜穂子

守り人シリーズや獣の奏者などで知られる上橋菜穂子さんが幼少期から作家になるまでを語った一冊。インタビューアーにたいして語る形式のせいか、上橋さんの物語に対すること、生きることそのものへの姿勢、それに優しい……というよりかは他人を受け入れるキ…

大人の遊びの本気『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団』 by あさりよしとお

大人が本気で遊ぶとこうなるんだぜ!! という見本。著者のあさりよしとお氏は漫画家で、なつのロケット団は衛星エンジニアである野田篤司を中心として発足したグループ。あの堀江貴文さんやSF作家の笹本祐一さんが所属している。目的は宇宙にいく! その…

はなとゆめ by 冲方丁

SF

冲方丁さんによる歴史小説第三弾。清少納言を主軸に据えた一冊。女性の目からみた宮廷政治や平安時代の人間関係、そしてあのよく知られた『春はあけぼの〜』からはじまる枕草子の文章を書ける才能あふれる視点の描き方が素晴らしい。本作において冲方丁さん…

キウイγは時計仕掛け by 森博嗣

森博嗣さんによるGシリーズ最新刊。もう9作目だし、紹介などはしない。今回も結構なおてまえでございました。とても楽しかった。前作よりもまた少し時がとんでいて、この時間の感覚がいいな、と思う。初期の頃からすると当たり前だけどキャラクタが歳をとっ…

ブラックライダー by 東山彰良

SF

面白かった小説、つまらなかった小説、興奮した小説、たくさん読んで経験してきたつもりであるし、どれも違った体験をできるのが小説を読む醍醐味である。本書『ブラックライダー』はなんだったのかというと、「なにがなんだかわからねえが、すげえ」としか…

〈小市民〉シリーズ by 米澤穂信

〈小市民〉シリーズとは、米澤穂信さんによって書かれた春期限定いちごタルト事件、夏期限定トロピカルパフェ事件、秋期限定栗きんとん事件 (上)(下)を対象とした名称。いつのまにかKindle化していたので読んだ。最近こうやって、いつか読もうと思いなが…

ブラインドサイト by ピーター・ワッツ

SF

素晴らしいファーストコンタクトSF。ファーストコンタクトの側面は「これが読みたかったんだよ!」という感じで興奮した。ハードSFであることはそのまま面白さに繋がるわけではないことはもちろんだけど、本作はそうした基盤の上に見事に「未知」を表現し…

宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議 (講談社現代新書) by 吉田たかよし

宇宙生物学が今マイブーム。何十億年といったスパンで生物の起源をさぐっていく旅は今まで当たり前だと思っていた「常識」が粉砕されて面白い。洋書だと結構数が出ていてよりどりみどり(Five Billion Years of Solitude by LeeBillings - 基本読書)なのだ…

教科書に載ってないUSA語録 by 町山智浩

場所が変われば常識も変わる。国ごと変われば法律も変わる。人種も変わる。日本じゃ信じられないようなことがしょっちゅう起こる。僕が留学していたオーストラリアの街ではハロウィーンになるとなぜか若い不良たちは卵を買い付け、車を乗り回し街中で人にぶ…

この正解の分からない混沌が、私は好きだった。──『富士学校まめたん研究分室』 by 芝村裕吏

ほんわかした表紙の絵柄と、「まめたん」というタイトルでゆるい感じにみえる。が、読んでみればこれがハードだ。小型の無人戦車(全長1m、全幅1m)のまめたんと、最初の発案者、研究者である三十歳処女の工学系女子を主軸に据えた一冊。少女漫画的なあたふた…

Five Billion Years of Solitude by LeeBillings

Astrobiologyという分野。宇宙生物学みたいな感じだろうか。地球以外への生物探査や、地球によく似た人間が移住できるような惑星の発見についての詳細な一冊。太陽系外にそうした惑星を探すにあたって、地質学、化学、生物学と多様な面からの科学的知見がワ…

黙示録 by 池上永一

池上永一さんによる新刊。600ページを超える大著だが電子書籍(なぜか上下にわかれている)で読んだので重さは感じず。18世紀前半のあたりを扱った琉球、主軸は舞踊ということで踊りの表現をどうするのか、期待を込めて読み始めたがこの表現がまた素晴…

ルールを変える思考法 (角川EPUB選書) by 川上量生

著者である川上量生氏のブログが大好きだ。はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記 と 続・はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記 ここ最近はあまり更新されていないみたい。でも更新されればどの記事も面白く、しかも幅が広い。経営について…

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫) by 上橋菜穂子

文庫版にて完結。これにて獣の奏者という物語は本当の意味で閉じた。獣の奏者は、珍しく1つのシリーズについて3つも記事を書いてしまうぐらいに、世界にハマりこんだ作品だった。アニメもやっていたので知っている方も多いかと思われるけれど、本編、ほん…

臨機巧緻のディープ・ブルー (朝日ノベルズ) by 小川一水

小川一水さんの新刊。カメラマンが乗り込んだ宇宙探査物。時代と、技術レベルと、種族の値を変えるだけでドラマがいくらでも生み出される、そして産まれた地球さえ飛び越えてただ「知る」為に宇宙まで乗り出していってしまう、SFの醍醐味の塊のような話だ…

来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書) by 國分功一郎

『暇と退屈の倫理学』の國分功一郎さんによる新刊新書。本書で行われている問題提起はシンプルにまとめられている。『なぜ主権者が立法権にしか関われない政治制度──しかもその関わりすら数年に一度の部分的なものにすぎない──が、「民主主義」と言われるの…

最近読んでいる英語の主に個人ブログを5つ紹介。

さいきんは英語のブログやサイトでおもしろいものを探すのがブームでいろいろ読んでいる。というわけで、その中でもオススメのサイトを選んでみた。ごくごく個人的な興味と経験に基づいて選ばれた、マイナなサイトだと思う。別に英語の勉強になるような観点…

歴史は繰り返す。だが、科学は反響する。『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』 by シッダールタ・ムカジー

男の4人に1人はがんで死ぬ。ずいぶんエンカウント率の高い敵だ。彼を知り己を知れば百戦して殆うからずと孫子はいったが、いずれ自分を殺す可能性が高い敵であるならば、突然目の前にやってきて強制的に対峙させられるその前に、敵のことを知っておくにこし…

BECOMING SPACEFARERS by JamesA.Vedda

If you want a wise answer, ask a reasonable question.-Hohann Wolfgang von Goethe, German writer and scientist アメリカの宇宙産業についてみていく一冊で、これがまた実に面白い一冊。アメリカにおける宇宙探査のターニングポイントがどこだったのか…

マリアビートル (角川文庫) by 伊坂幸太郎

「あのさ」真莉亜がほとほと呆れた声を出した。「何がどうなっているのか分からないけどさ、どういう新幹線なの。トラブルばっかりじゃない。」 これは…………素晴らしかった!! いろんなところで偶然が左右し、プロット的にもサービスなのかなんなのか、おさ…

失踪日記2 アル中病棟 by 吾妻ひでお

あの『失踪日記』から早八年……失踪日記の正統なる続編。度重なる飲酒、幻覚、手足の震え、胃の痙攣の果てに、家族によって力づくで押し込まれたアル中病棟編である。これがもう、客観性が、出てくる人物たちの奇想天外さが、アル中病棟で繰り広げられる珍事…

読書について by 小林秀雄

なんでいまだにこんな本が新刊として出ているんだろう、と思えば今年で没後30年なんですね、小林秀雄。日本一有名といっても過言ではない文芸批評家である小林秀雄が書いた、読むこと/書くことについてのエッセイをまとめた一冊。もう随分むかしに書かれた…

小林秀雄の哲学 (朝日新書) by 高橋昌一郎

本書の目的は、「小林秀雄の哲学」に焦点を当てて、小林の魅力と危険性を掘り下げられるところまで掘り下げてみることにある。具体的には、彼の生涯を追いながら、彼の根底で一貫して揺るがなかった彼の論法を追究するつもりである。 感性の限界や知性の限界…

考える生き方 by finalvent

極東ブログ の著者による自伝的な本で、これがしんみりとしていて面白かった。人のブログに興味がないので、極東ブログ自体はほとんど読んだこともないのだけど、ワインのつまみに軽い本でも読むか、と思って読んだらいい具合に力の抜ける本。英語学習や大学…

第六大陸は現実になるか?

The Space Review: Back to the Moon, commercially この記事と、偶然読んでいた『BECOMING SPACEFARERS: RESCUING AMERICA'S SPACE PROGRAM』という本で公共部門と民営部門の宇宙産業の関わり方について書かれていた。どちらも読んでいてなかなかおもしろか…

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫) by 森見登美彦

有頂天家族を読み、すっかり森見登美彦作品のとりこになってしまった(デビュー作の太陽の塔は読んでいたけれど、以後の作品は読んだことがなかった)。そうして夜は短し歩けよ乙女⇒四畳半神話大系⇒ペンギン・ハイウェイとKindleで読める森見登美彦作品をも…