基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2013-01-01から1年間の記事一覧

成程 by 平方イコルスン

コミック短篇集。年間日本SF短編の傑作選である極光星群に、この『成程』から一短編が収録されていて、うわっなんだこれ!! と驚いてしまった。状況設定が不可思議な物が多く、世界自体が普通のものであっても出てくる人たちのやりとりがやはり尋常じゃなか…

洋書多読について

ふと、今年の1月頭に仕事も幾日かは休みだし、時間もあって心に余裕があった時、洋書でも読んでみようかなと思い立った。たしかNew York Timesかどっかの年間レヴューが出始めた頃で、それを見ていたら「そういえば今ならボタン一回押せば買えるんだよな」…

死ぬことと見つけたり by 隆慶一郎

隆慶一郎氏による一冊(上下巻だから二冊だけど)。うわあこれは名著だ。素晴らしい。先日葉隠入門 (新潮文庫) by 三島由紀夫 - 基本読書を読んだばかりで、その一息で踏み込んでくるような文章に一瞬で引き込まれてしまう。署名である「死ぬことと見つけた…

葉隠入門 (新潮文庫) by 三島由紀夫

森博嗣著であるヴォイド・シェイパから始まるシリーズの最新刊、『スカル・ブレーカ』の引用本(章の頭ごとに引用されるネタ本)だったので(この葉隠入門が、ではなく葉隠そのものが)読んでみたのですが、これがまたとんでもなくすごい。武士が小学生の頃…

誰得&基本読書会@新宿 課題本:極光星群 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)のお知らせ

冬木糸一と申します。誰が得するんだよこの書評 さんのところでよく読書会を開いておりますが今回はそれの告知です。以下告知情報。

ガッチャマンクラウズが面白い(五話時点の感想)

ガッチャマンクラウズのアニメが今放送されているのだけど、これが面白い。今年に入ってから見た中で2話を見ようと思えたのはこれだけである(「全部見た中で」だったらすごいかもしれないが、他のものがつまらないわけではなく、そもそもほとんどアニメを…

蔵書の苦しみ (光文社新書) by 岡崎武志

月に80冊ぐらい買うので蔵書の苦しみはある程度理解しているつもりである。月に80冊買うと1年で900冊を超え、部屋はかなり圧迫される。本棚は大抵の場合本の重みに耐え切れずたわんでくるし、地面にうまく積んでいてもちょっと探しものをしたりするとすぐ崩…

「思考」を育てる100の講義 by 森博嗣

作家・森博嗣さんによる新作。こことか(常識にとらわれない100の講義 - 基本読書) こことか(つぶやきのクリーム the cream of the notes - 基本読書)で片っ端から何か書いてきたのでさすがにもう書くこともない‥‥だったら書くなよ‥‥と自問自答してしまう…

がん 生と死の謎に挑む by 立花 隆,NHKスペシャル取材斑

最近死ぬときのことばかり考えている。別に自殺する予定があるわけでもなく、難病におかされているわけでもなく、早いか遅いかの違いだけで人間いつかは死ぬのだから、いつなんどき「あと一年がせいぜいでしょう」と宣告されるかもわからないよなあ、と思う…

協力がつくる社会―ペンギンとリヴァイアサン by ヨハイ・ベンクラー

特に何らかの知識を得たいというわけでもなく、タイトルからなんとなく読んだが(読み始めてから気がついたが、訳者が山形氏であった)、これはなかなか面白い一冊。協力がつくる社会というか、協力ってなんて素晴らしいんだろう、そして利他的な行動をする…

ドキュメント 深海の超巨大イカを追え! (光文社新書)

クラーケン (ハヤカワ文庫SF) by チャイナ・ミエヴィル - 基本読書 ←を読んだ流れでちょっと気になっていた本書を読んだのですが、これがまたおもしろいエピソードの連続。失敗の連続と、NHKという組織の中でいかにしてダイオウイカの撮影をするのかという資…

クラーケン (ハヤカワ文庫SF) by チャイナ・ミエヴィル

たいへんおもしろく読んだ。クラーケン、と名前がついているのでクトゥルフ的な意味で世界がヤバイのかと思うだろうが‥‥。相変わらず長く、密度が濃いし、ロンドン(都市)を舞台にした物語だが、随分と親切なプロットで、派手なアクション場面もあるし、情…

圧縮された産業発展 -台湾ノートパソコン企業の成長メカニズム- by 川上桃子

山形浩生氏のフォロワー(Twitter的な意味ではない)であるのでCakesの連載でこの本が熱烈に紹介されていたときにすぐに買ったのだが(5千円もするのだ。痛い。)、先にご本人に紹介されてしまった。⇒川上『圧縮された産業発展』:台湾のIT産業発展は、歴史…

人生なんて、そんなものさ―カート・ヴォネガットの生涯 by チャールズ・J.シールズ

2007年に亡くなったカート・ヴォネガットの評伝。ひとりの人生を総括しようというのだから当然なのかもしれないが(実際他の作家の評伝も軒並み長いし)、600ページを超える大著だ。長々としていて、刈り取って欲しいという部分もあれば、ここは足り…

哲学ファンタジー:パズル・パラドックス・ロジック (ちくま学芸文庫) by レイモンド・スマリヤン

ちくま学芸文庫で新たに出されていて、訳者が◯◯の限界シリーズの高橋昌一郎さんということで手にとったのだけど、これがたいへん愉快かつ面白かった。著者のレイモンド・スマリヤンという方はその道では有名な存在らしい。僕は寡聞にして耳にしたことがなか…

未来力養成教室 (岩波ジュニア新書)

日本SF作家クラブ編の「想像力」「未来」をテーマにしたエッセイ集。SF JACKでは短編を組むし、なんだか活動が本になって現れている。会長は変わってるけど。そもそも数があんまり出ていないのか、Amazonはあっという間に品切れになってしまうし本屋にもぜ…

さよならまでの読書会: 本を愛した母が遺した「最後の言葉」 by ウィル・シュワルビ

なんとなく読書会と入っているので手にとってみたのだけど、あんまり読書会とは関係がない。章ごとに署名が冠されているが、別にその本について長々と語っているわけでもない。膵臓癌に侵された読書好きの母と、その息子が2人っきりでどんな本を読んできた…

赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE by 森博嗣

すごい。なんだこれは、というのが一読しての第一印象。昨日読み終えて、今もう一度読み返してみたけれど、このすごさはなんなんだろう。連載作の単行本化だが、そのタイミングでこの作品が森博嗣さんによる「百年シリーズ」の三作目であることが判明し、ツ…

修行論 by 内田樹

内田樹先生による「修行論」。ただ内容は、既に内田先生の身体論系の本を読んでいる人には目新しい情報もあまりない。たとえば「天下無敵」とは何かを語った「機」とは何かを解き明かしていくのが僕はもともと大好きだったんだけど、それも本書にはずらーっ…

know (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-1) by 野崎まど

知ろうとすることの物語。ライトノベル系で作品を重ねてきた野崎まどさんのハヤカワ文庫一作目。当然のごとくSF。ここ数年の早川JAがライトノベル系の執筆者を送り込んできているのは自明だけど、その中でも意外な人選といえるのではなかろうか。しかし一…

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション) by ローラン・ビネ

なんといって分類したらいいものやら、途方にくれてしまうような作品で、まあ一言で、アホみたいに表現するのならば「かなりすごい。」になってしまう。HHhHとはまたまったく意味のわからないタイトルだが、Himmlers Hirn heiβt Heydrich(ヒムラーの頭脳は…

高野秀行という作家

謎の独立国家ソマリランド by 高野秀行 - 基本読書 を読んでいらい、高野秀行という作家はなんて面白い本を書くんだ!! と驚いてしまい、読み漁ってきた。デビュー作である『幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)』から『怪魚ウモッカ格闘記』『ミャンマーの柳…

スロウハイツの神様(講談社文庫) by 辻村深月

昨日こんな記事を書いたら⇒共同生活物の魅力 - 基本読書 共同生活ものということで、この『スロウハイツの神様』を教えてもらった。辻村深月さんによる小説。いやあ適当に書いているといいこともあるもんだなあ。こんないい本を教えてもらえるなんて。共同生…

共同生活物の魅力

僕は思うのだけれど、人生においてもっとも素晴らしいのは、過ぎ去ってもう二度と戻ってくることのないものなのだから。──村上春樹『使いみちのない風景』 『さくら荘のペットな彼女』という作品が完結した。さくら荘とは高校の寮で、問題児ばかりが集まって…

世界を回せ by コラム・マッキャン

『世界を回せ』とは印象的なタイトルだ。書店で見かけた時にすっかり惚れ込んでしまった。ただしなんであれそうだが、つまらない本に使う金と時間は持ち合わせていない。衝動買いを容易く出来るほど経済的に豊かではないので念のためぱらぱらと冒頭をめくっ…

(株)貧困大国アメリカ (岩波新書) by 堤未果

アメリカの問題一気見シリーズ。どこの国を見渡しても問題がない国なんてないわけだけど、アメリカの問題もなかなか気合が入っていてみていると大変で笑ってしまう。本書の主要なテーマはタイトルに㈱と入っていることから連想されるように、まるで株式会社…

読み手への親切とは

文章なんてものは小説でもノンフィクションでも人を喜ばせるという点で、最初は自分のエゴみたいな部分をどれだけ消して読み手を考えられるかということだ。しかしそれを徹底するとその人にしかないものが消えてしまう。基本的にはみなどこにそのバランスを…

ワセダ三畳青春記 (集英社文庫) by 高野秀行

謎の独立国家ソマリランド by 高野秀行 - 基本読書 謎の独立国家ソマリランドはもうめちゃくちゃおもしろい本で、僕は「なんで今までこんな面白い作家を見逃していたんだ!?」とショックに襲われた。そして高野秀行さんの作品を買い漁り読み漁っているとこ…

謎の独立国家ソマリランド by 高野秀行

これはもうちょーーーー面白くて読んでいる間何度もげらげら笑い、驚き、そして最後には笑いながら泣いた。無政府状態が続き海賊が跋扈し「リアル北斗の拳」状態と噂されている崩壊国家の北に、十数年も平和を維持しさらには「まっとうな」民主主義を行なっ…

書くことについて (小学館文庫 キ 4-1) by スティーヴン・キング

キングによる小説作法。世の中にはいくつもの小説作法の本があって、僕もつくっている人間は何を考えているのかを知りたくて、結構読んでいたんだけど本書はその中でも群を抜いて素晴らしい。最良の一冊だ。作法がよくできている、画期的なやり方だ! という…