基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

『ギルガメシュ叙事詩』から『叛逆航路』まで、神話、SF、幻想、ファンタジィ中心の最高のブックガイド!──『世界物語大事典』

世界物語大事典作者: ローラミラー,巽孝之,Laura Miller,越前敏弥出版社/メーカー: 三省堂発売日: 2019/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『世界物語大事典』はすごい本だ! この世界には様々な本が存在するが、その中でも「僅かなりとも…

能力者たちが跳梁跋扈するアジア都市を舞台にした、世界幻想文学大賞受賞のSFマフィア物──『翡翠城市』

SF

翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045)作者: フォンダリー,大谷真弓出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/17メディア: 新書この商品を含むブログを見るこの『翡翠城市』は、少ない作品数ながらも軒並み評価の高いフォンダ・リーに…

神話と現実が入り混じったようなやべーやつ──『魔王:奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』

魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男作者: エヴァンラトリフ,Evan Ratliff,竹田円出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/17メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『魔王:奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は、合法的なイン…

技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』

ベーシックインカム作者: 井上真偽出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見るベーシックインカムと言うと、普通は全国民に一律3万なり10万なりといった一定額を定期的に振り込み続ける、最低給付保障をさす言葉…

BIを導入したら本当に人は働かなくなるのか?──『みんなにお金を配ったら──ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?』

みんなにお金を配ったらー―ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?作者: アニー・ローリー,上原裕美子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見るベーシックインカムという、最低限所得保障の考え…

科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』

事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこう…

すべての関係性を精算し、孤独に落ち沈んでいく個人主義の極地のような男を描くウエルベック最新作──『セロトニン』

セロトニン作者: ミシェル・ウエルベック,関口涼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『セロトニン』は、フランスの代表的作家ミシェル・ウエルベックの2019年に刊行されたばかりの最新作の邦…

日本の新本格ミステリに傾倒した著者による、もう二度と戻ってくることのない青春が蘇るような本格学園華文ミステリ──『雪が白いとき、かつそのときに限り』

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,中村至宏,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る前漢時代の百合ミステリで(僕の)度肝をぬいた『元年春之祭』の陸秋槎による学…

ゲームAIの基礎がこの一冊に集約されている!──『ゲームAI技術入門──広大な人工知能の世界を体系的に学ぶ』

ゲームAI技術入門──広大な人工知能の世界を体系的に学ぶ作者: 三宅 陽一郎出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2019/09/30メディア: 単行本AmazonKindle本書はゲームAIの研究と開発の最前線で戦い続けている三宅陽一郎さんの「ゲームAI技術入門」である。三…

ツイッターから解放されるために──『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』

デジタル・ミニマリスト: 本当に大切なことに集中する作者: カル・ニューポート出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/03メディア: 単行本AmazonKindleこの『デジタル・ミニマリスト』は、端的にいうと「TwitterやFacebookみたいなSNSは人間の注意・関心…

SFミステリアドベンチャーゲームの快作──『AI:ソムニウムファイル』

AI: THE SOMNIUM FILES(アイ: ソムニウム ファイル) -Switch 【CEROレーティング「Z」】 (【予約特典】スペシャルサウンドトラック~REVERIES IN THE RaiN~ 同梱)出版社/メーカー: スパイク・チュンソフト発売日: 2019/09/19メディア: Video Gameこの商品を含…

十二人を殺害し五〇人を暴行、百件以上の強盗を行った最悪の殺人鬼──『黄金州の殺人鬼──凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』

黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-9)作者: ミシェル・マクナマラ,村井理子出版社/メーカー: 亜紀書房発売日: 2019/09/28メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るこの『黄金…

奇想からSFまで、尽きぬアイディアに支えられた極上の超短篇集──『銀河の果ての落とし穴』

銀河の果ての落とし穴作者: エトガル・ケレット,広岡杏子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/09/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『銀河の果ての落とし穴』は、イスラエル生まれの作家エトガル・ケレットによる短篇集である。正直…

悪を科学で分析する──『悪について誰もが知るべき10の事実』

悪について誰もが知るべき10の事実作者: ジュリア・ショウ,服部由美出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/09/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る正義は人の数だけあるというが、悪についても同じことが言えるだろう。肉を食べるというだけで悪認…

『ゲームの王国』、小川哲による歴史×時間SF短篇集──『嘘と正典』

嘘と正典作者: 小川哲出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『なめらかな世界と、その敵』の伴名練を筆頭に今30代前半にはやたらと熱いSF作家が揃っているのだけれども、そのうちの一人がこの小川哲だ。…

ヒューゴー賞を三年連続で受賞し、荘厳なアートワークで圧倒する化け物級のエピック・ファンタジィ・コミック──『モンストレス』

モンストレス vol.1:AWAKENING (G-NOVELS)作者: マージョリー・リュウ出版社/メーカー: 誠文堂新光社発売日: 2017/12/22メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るこの『モンストレス』はいわゆるアメリカン・コミックで、中国系アメリカ人のマージョリ…

情報理論のレンズを通して浮かび上がってくる生命像──『生物の中の悪魔 「情報」で生命の謎を解く』

生物の中の悪魔 「情報」で生命の謎を解く作者: ポール・デイヴィス,水谷淳出版社/メーカー: SBクリエイティブ発売日: 2019/08/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見るどのように生命が生まれたのか、というのは依然判明していない。地球や火星のよう…

ワイドスクリーン・バロックという言葉を生み出した、複雑怪奇、超絶怒涛の幻の名作SF──『パラドックス・メン』

SF

パラドックス・メン (竹書房文庫)作者: チャールズ・L.ハーネス,Charles L. Harness,中村融出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/09/12メディア: 文庫この商品を含むブログを見るこのチャールズ・L・ハーネス『パラドックス・メン』は、1953年に刊行された…

我々は宇宙へと飛び出すべきなのか──『銀河帝国は必要か? ロボットと人類の未来』

SF

銀河帝国は必要か? (ちくまプリマー新書)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2019/09/06メディア: 新書この商品を含むブログを見るアシモフの〈ファウンデーション〉シリーズを中心としたSF作品をとっかかりに、ロボットや人工知能が不可避…

現代日本SFの見取り図を提供しつづけてきた年刊日本SF短編傑作選、完結──『おうむの夢と操り人形』

おうむの夢と操り人形 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)作者: 大森望,日下三蔵出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/08/29メディア: 文庫この商品を含むブログを見る毎年多様な日本の傑作SF短編をまとめて世に送り出してきた年刊日本SF傑作選が、本…

最先端物理理論の提唱者が語る、時間の実態──『時間は存在しない』

時間は存在しない作者: カルロ・ロヴェッリ,冨永星出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2019/08/29メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る時間は存在しない、といきなり言われても、いやそうは言ったってこうやって呼吸をしている間にもカ…

人間集団の大きな流れの物語──『人口で語る世界史』

人口で語る世界史 (文春e-book)作者: ポール・モーランド出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/08/29メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る人口については、日本においては最重要検討事項のひとつだろう。日本の年齢の中央値は現在46歳。世界で最…

全人類が記憶を喪失し、地面がバラバラに砕け空中に散らばった世界──『落下世界』

SF

落下世界 上 (創元SF文庫)作者: ウィル・マッキントッシュ,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/08/29メディア: 文庫この商品を含むブログを見る落下世界 下 (創元SF文庫)作者: ウィル・マッキントッシュ,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売…

デビュー40周年をむかえ、なおあらたな領域を開拓し続ける作家・神林長平──『先をゆくもの達』

SF

先をゆくもの達作者: 神林長平出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『先をゆくもの達』は、SFマガジンの連載の単行本であり、同時に今年(2019年)デビュー40周年を迎えた神林長平が「この先へ」向かう…

宇宙生物学について最初に知るのにうってつけの一冊──『エイリアン──科学者たちが語る地球外生命』

エイリアン──科学者たちが語る地球外生命作者: ジム・アル=カリーリ,斉藤隆央出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2019/08/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る観測技術の高まり、生物学の知見、惑星気候学の発展に伴って、地球外生命の存在可能…

恋人から食事、命の価値までアルゴリズムで決定されるディストピア・コメディ──『クオリティランド』

SF

クオリティランド作者: マルク=ウヴェ・クリング,森内薫出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/08/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る17年のドイツSF大賞の一位作品である。ドイツの、それもSFはあまり翻訳されないのだが、3年前に同じ…

我々は、いかにして生まれたのか──『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』

我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの (ブルーバックス)作者: 藤崎慎吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/08/22メディア: 新書この商品を含むブログを見る本作は、小説や科学系のノンフィクション作家である藤崎慎吾さんが講談社ブル…

SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集──『なめらかな世界と、その敵』

なめらかな世界と、その敵作者: 伴名練,赤坂アカ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『なめらかな世界と、その敵』を端的に紹介すれば、SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オール…

市場経済に組み込まれたヒーローたち──『ザ・ボーイズ』

にこやかな顔で写真にうつるホームランダーAmazonPrimeで配信中の海外ドラマ『ザ・ボーイズ』(全8話)を観た。舞台となっているのは、凄まじい力を持ったスーパーヒーローたちが正体を隠して人助けをする──のではなく、営利企業に雇われているタレントとして…

全篇詩のように短い文体で綴られた、復讐と暴力の連鎖──『エレベーター』

エレベーター作者: ジェイソン・レナルズ,青木千鶴出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る全篇詩のような短い文体で綴られていく、復讐と暴力の連鎖を描く物語だ。一ページに十数行、場合…