基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

どこまでの精密さを手に入れることができるのか、また、それは必要なのか──『精密への果てなき道:シリンダーからナノメートルEUVチップへ』

精密への果てなき道 シリンダーからナノメートルEUVチップへ作者: サイモンウィンチェスター出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る「精密さ」を主軸に据えた歴史&技術ノンフィクションである。現代社会…

男女の垣根が溶けてなくなっていく──『森があふれる』

森があふれる作者: 彩瀬まる出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/08/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見る彩瀬まるさん最新作。男の社会的規範、女の社会的規範、夫婦のディスコミュニケーション、踏み込まず、どこにもいけない関係性の鬱屈…

恐竜の始まりからその終わり、さらに「現代の恐竜」まで、一冊でみっしりまとまった快作──『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』

恐竜の世界史――負け犬が覇者となり、絶滅するまで作者: スティーブ・ブルサッテ,土屋健,黒川耕大出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『恐竜の世界史』はいい! 実は恐竜は羽毛が生えてたんじゃね…

タイムループ&人格入れ替わり殺人ミステリ──『イヴリン嬢は七回殺される』

イヴリン嬢は七回殺される作者: スチュアート・タートン,三角和代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見るタイムループ物のミステリィとか完全に大好きなやつなので、この『イヴリン嬢は七回殺される』がそ…

私人としての側面からみえてくるもの──『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』

岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。作者: ほぼ日刊イトイ新聞,100%ORANGE出版社/メーカー: 株式会社ほぼ日発売日: 2019/07/30メディア: 新書この商品を含むブログを見る任天堂の社長だった岩田聡さんの言葉を厳選し、編集し、まとめた本になる。ほぼ…

宇宙誕生の謎を解き明かしつつある人々の話──『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』

ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する (文春e-book)作者: ジーヤ・メラリ,坂井伸之・解説出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/07/26メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る宇宙の始まりについての本である。宇宙の始まりといっても、意味は二つあ…

潜入捜査を続けるうちにすっかり親友になってしまった男たちの、背反する友情の実話ノンフィクション──『詐欺師をはめろ──世界一チャーミングな犯罪者VS.FBI』

詐欺師をはめろーー世界一チャーミングな犯罪者 vs. FBI作者: デイヴィッドハワード,David Howard,濱野大道出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/06メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る めちゃくちゃエモい いやー正直ぜんぜん…

北上次郎、書評家40年の軌跡──『書評稼業四十年』

書評稼業四十年作者: 北上次郎出版社/メーカー: 本の雑誌社発売日: 2019/07/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る北上次郎氏の書評稼業40年のあれやこれやについて語られた一冊である。それがなんであれ40年続いたら凄いもんだが書…

世界的なファンタジィ・サーガの傑作五部作、ついに完結──《ウィッチャー》

ウィッチャーI エルフの血脈 (ハヤカワ文庫FT)作者: アンドレイ・サプコフスキ,川野靖子,天沼春樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るウィッチャーV 湖の貴婦人 (ハヤカワ文庫FT)作者: アンドレイ…

自分を支配するアルゴリズムとどう付き合っていくべきか──『Uberland ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか』

Uberland ウーバーランド ―アルゴリズムはいかに働き方を変えているか―作者: アレックス・ローゼンブラット,飯嶋貴子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/07/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るウーバーランドとは日本の有名な…

多文化を乗せた宇宙船の、長い旅路──『銀河核へ』

SF

銀河核へ 上 (創元SF文庫)作者: ベッキー・チェンバーズ,細美遙子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見る銀河核へ 下 (創元SF文庫)作者: ベッキー・チェンバーズ,細美遙子出版社/メーカー: 東京創元社発売…

自律型兵器の技術・倫理についての最前線──『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』

無人の兵団――AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争作者: ポールシャーレ,Paul Scharre,伏見威蕃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/18メディア: 単行本この商品を含むブログを見る一般向けの無人兵器本だと長らくシンガーの『ロボット兵士の戦争』が…

進化はどこまで予測可能なのか?──『生命の歴史は繰り返すのか?: 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』

生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む作者: Jonathan B. Losos,的場知之出版社/メーカー: 化学同人発売日: 2019/06/01メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る生命の進化の歴史は偶然に支配されている。たと…

『天気の子』、『君の名は。』とはまた別方向の大傑作

天気の子アーティスト: RADWIMPS出版社/メーカー: Universal Music =music=発売日: 2019/07/19メディア: CDこの商品を含むブログを見るあまりネタバレはしていない。夜、『天気の子』を友人と観に行く。大変な傑作。当然『君の名は。』と比べられるし、比べ…

終末の予感だけがただひたすらに蔓延する小説──『穴の町』

穴の町作者: ショーン・プレスコット,北田絵里子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『穴の町』はオーストラリアの作家ショーン・プレスコットの長篇小説のデビュー作である。「世界文学」としか言…

身体を重ねるたびに夢で訪れることができる街の地図が完成に近づいていく──『パリンプセスト』

パリンプセスト (海外文学セレクション)作者: キャサリン・M・ヴァレンテ,井辻朱美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るこの『パリンプセスト』は《孤児の物語》シリーズや『宝石の筏で妖精国を旅した少…

『三体』読了者は同著者原作の『流転の地球』も観るべし

SF

三体作者: 劉慈欣出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る『三体』を読了した流れで、劉慈欣の短篇「さまよえる地球(原題:流浪地球)」が原作となっている『流転の地球』をNetflixで観たのだけれども、…

絶望的な負け戦をどう戦うか──『NOKIA 復活の軌跡』

NOKIA 復活の軌跡作者: リストシラスマ,田中道昭,渡部典子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るノキア、復活の軌跡というけれど僕の中でノキアが復活したというイメージはまったくなかっ…

ゾンビ化が始まったが最後、緩やかに自我と身体が失われてゆく──『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』

SF

マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に (ジャンプジェイブックスDIGITAL)作者: 折輝真透,うえむら出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/06/19メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る第四回ジャンプホラー小説大賞の、初の金賞受…

中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』

三体 (ハヤカワ文庫SF)作者:劉 慈欣早川書房Amazon『三体』とは! 中国の作家劉慈欣によって書かれたSF三部作の第一部目にして、中国国内だけで三部作累計2100万部を刊行し、さらに日本でも人気のケン・リュウによる翻訳によってアメリカの歴史あるヒュー…

抽象絵画とかぜんぜんわかんねぇ、という人にこそ読んでもらいたい──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』

なぜ脳はアートがわかるのか ―現代美術史から学ぶ脳科学入門―作者: エリック・R・カンデル,高橋洋出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見るなぜ脳はアートがわかるのか。そんなことをいうと、「いや、そもそも…

人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』

雪降る夏空にきみと眠る (上) (竹書房文庫)作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る雪降る夏空にきみと眠る (下) (竹書房文庫)作者: ジャスパーフォード,Jasper…

言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』

方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション)作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る言葉によって綴られた幻想の架空都市──とお題が出されれば、幻想文学フ…

失われつつある世界をとらえるために──『世界の書店を旅する』

世界の書店を旅する作者: ホルヘ・カリオン,野中邦子出版社/メーカー: 白水社発売日: 2019/06/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る世界中から本屋が消えている。無論、日本からも消えていて、自分が昔住んでいた街にたまに戻っても、自分が通って…

いかにしてNETFLIXは今のような企業になったのか?──『NETFLIX コンテンツ帝国の野望―GAFAを超える最強IT企業―』

NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業作者: ジーナ・キーティング,牧野洋出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/06/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る何年か前から、Neftlixに加入し続けている。観たいアニメが…

物語はどれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』

物語創世:聖書から〈ハリー・ポッター〉まで、文学の偉大なる力作者: マーティンプフナー,塩原通緒,田沢恭子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るフィクション、物語とは言ってみれば架空の存在なわけだ…

現実とは何かが不明確になった社会を描く、森博嗣によるSF新シリーズ開幕篇──『それでもデミアンは一人なのか?』

それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain? (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/06/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見る森博嗣によって講談社タイガで刊行されていた、人間の生殖行為によ…

SFとして、小説としても圧巻の短篇集──『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』

アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/06/20メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る勇敢にも「世界初」と銘うたれている百合SFアンソロジーである。女性同士の広い関係性を扱う百合と…

誰の記憶にも残ることができない女──『ホープは突然現れる』

SF

ホープは突然現れる (角川文庫)作者: クレア・ノース,雨海弘美出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/06/14メディア: 文庫この商品を含むブログを見る死んだ直後に自分の人生をやり直す、いわゆるループ物の新基軸を切り開いた『ハリー・オーガスト、15回目…

終わりなきモルヒネとしての量的金融緩和──『中央銀行の罪 市場を操るペテンの内幕』

中央銀行の罪 市場を操るペテンの内幕作者: ノミプリンス出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/06/06メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る今の経済は僕にとっては複雑すぎる。デフレが続けば消費をしなくなって結果的に景気が後退するから、金利…