基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

人工知能とボットに仕事の大半が代替され、多くの人間が薬物を服用し能力を向上しながら労働するようになった世界──『マシンフッド宣言』

マシンフッド宣言 上 マシンフッドセンゲン (ハヤカワ文庫SF)作者:S B ディヴィヤ早川書房Amazonこの『マシンフッド宣言』は、インド生まれのアメリカ人作家S・B・ディヴィヤの第一長篇となる。21世紀の近未来を舞台に、人工知能とロボットに人間の労働…

第12回アガサクリスティー賞大賞受賞作にして、医療的な仮想空間・介助用ロボットの可能性を謎解きと絡めて描き出す意欲作─『そして、よみがえる世界。』

そして、よみがえる世界。作者:西式 豊早川書房Amazonこの『そして、よみがえる世界。』は第12回アガサ・クリスティー賞の大賞受賞作である。前回のアガサ・クリスティー賞の受賞作は話題沸騰の逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』だったのでその次の選考に…

「幸せ」を追求するのはいいことなのか?──『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』

ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常作者:エドガー・カバナス,エヴァ・イルーズ,山田陽子みすず書房Amazon「幸せ」であることは、良いものであるように思える。なぜなら、幸せは良いものだからだ。トートロジーだが、こう考える人は多いだろう(…

飼い犬が野生に放り出された時、何が起こるのか?──『犬だけの世界:人類がいなくなった後の犬の生活』

犬だけの世界: 人類がいなくなった後の犬の生活作者:マーク・ベコフ,ジェシカ・ピアス青土社Amazonイヌを飼ったことがある人たちは家庭内で一度は、腹を出してごろんと寝ているイヌを眺めながら「これじゃあ(野生を失ってしまった家庭犬じゃあ)絶対野生に…

孤島に聳えるオメガ城へと6人の専門家+一人のジャーナリストが集められる、森博嗣最新ミステリィ長篇──『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei's Last Case』

オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case (講談社ノベルス)作者:森博嗣講談社Amazonこの『オメガ城の惨劇』は、有料会員サービスへと移行したメフィストで目玉として連載されていた森博嗣による小説にエピローグを追加した長篇小説に…

異種移植の歴史と未来を語る本──『異種移植――医療は種の境界を超えられるか』

異種移植――医療は種の境界を超えられるか作者:山内一也みすず書房Amazon現代は臓器が損傷を受けたり病気で蝕まれた時、臓器移植という手段をとることができる。とはいえ、問題は多い。拒絶反応が起きないように考慮する必要があるし、そもそも臓器が欲しい人…

AIを搭載した義足と足を失ったダンサーが”共生”し、新しいダンスを作り出す、長谷敏司10年ぶりの最高傑作────『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

プロトコル・オブ・ヒューマニティ作者:長谷 敏司早川書房Amazon長谷敏司、『BEATLESS』(2012)に続く10年ぶりのSF長篇がこの『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』になる。長谷敏司がその間何もしていなかったわけではなくて、短篇も数多く書いているし、…

誰もが手話ができる島には、耳が聴こえないことがハンディキャップにならない共同体ができた──『みんなが手話で話した島』

みんなが手話で話した島 (ハヤカワ文庫NF)作者:ノーラ エレン グロース早川書房Amazonこの『みんなが手話で話した島』は日本では最初に1991年に築地書館から刊行された単行本の、30年以上の年月を経ての文庫版である。テーマになっているのは、アメリカ・ボ…

ヒューゴー&ローカス賞受賞の、対話が可能なのかすらもわからぬ相手との決死の外交を描く宇宙・ファーストコンタクトSF──『平和という名の廃墟』

SF

平和という名の廃墟 上 帝国という名の記憶 (ハヤカワ文庫SF)作者:アーカディ マーティーン早川書房Amazonこの『平和という名の廃墟』は、前作『帝国という名の記憶』で長篇デビュー作ながらもヒューゴー賞を受賞したアーカディ・マーティンの第二作にして二…

脳内のニューロンを修復もすれば破壊もする、ミクログリア細胞について──『脳のなかの天使と刺客』

脳のなかの天使と刺客: 心の健康を支配する免疫細胞作者:ドナ・ジャクソン・ナカザワ白揚社Amazon近年、『「うつ」は炎症で起きる』などうつ病をはじめとした精神疾患と身体的な炎症の関係性が(一般向けの本でも)注目を集めるようになったが、本書『脳のなか…

われわれは運動をするために進化してきたわけではない──『運動の神話』

運動の神話 上作者:ダニエル E リーバーマン早川書房Amazonこの『運動の神話』は、『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』などの著作や、身体活動に関する研究で知られる人類学者ダニエル・E・リーバーマンによる、運動についてのノンフィクション…

現代韓国のSF作家らに多大な影響を与え、韓国SFの代名詞と言われる作家ペ・ミョンフンの代表作──『タワー』

SF

タワー作者:ペ・ミョンフン河出書房新社Amazonこの『タワー』は、韓国を代表するSF作家の一人ペ・ミョンフンの代表作といえる連作短篇集だ。最初、それ以外の前情報は一切仕入れずに読み始めたのだが、すぐに面食らってしまった。いったいこれは何の話なん…

2033年、中国の日本侵攻によって東京が東西で分断された世界での事件を追うSFミステリ─『九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション』

九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション (竹書房文庫)作者:マルカ・オールダー,フラン・ワイルド,ジャクリーン・コヤナギ,カーティス・C・チェン竹書房Amazonこの『九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション』は、マルカ・オールダー、フ…

『三体』の劉慈欣を代表するような作品が集められた、同時刊行の短篇集2冊──『流浪地球』『老神介護』

SF

流浪地球 (角川書店単行本)作者:劉 慈欣,大森 望,古市 雅子KADOKAWAAmazonこの『流浪地球』と『老神介護』は、『三体』で知られる中国を代表する作家劉慈欣の短篇集である。なぜ同時に二冊出てるんだ、と思うかもしれないが、KADOKAWAが翻訳権を得た劉慈欣の…

科学の世界に革命をもたらしえる力──『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』

因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか作者:ジューディア・パール,ダナ・マッケンジー文藝春秋Amazonこの『因果推論の科学』は、その名の通り因果推論について、その先駆者の著者が書いた一般向けのサイエンス本である。とはいえ、大半の人の反応は…

資金洗浄し放題になると何が起こるのか──『クレプトクラシー資金洗浄の巨大な闇―世界最大のマネーロンダリング天国アメリカ』

クレプトクラシー 資金洗浄の巨大な闇: 世界最大のマネーロンダリング天国アメリカ作者:ケイシー・ミシェル草思社Amazonこの『クリプトラシー資金洗浄の巨大な闇』は、米国でこれまで行われてきた資金洗浄の実態について書かれた一冊である。僕のような一般…

世界から昆虫が減少しつつある現代の状況について──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』

サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」作者:デイヴ・グールソンNHK出版Amazonこの『サイレント・アース』は副題に入っているように、殺虫剤や農薬などの化学物質の危険性を訴えた「沈黙の春」の昆虫をテーマにした現代版とでもいうべき一冊だ。著者によ…

都市に人間が住めなくなるほど環境が悪化し、最後の原生地へと逃れた一群を描き出す、親子の愛憎の物語──『静寂の荒野』

静寂の荒野【ウィルダネス】作者:ダイアン クック早川書房Amazonこの『静寂の荒野』は、ニューヨークを拠点とするアメリカ人女性作家ダイアン・クックのはじめての長篇作品である。長篇は初だが、短篇ですでにデビュー済み。本邦でもすでに短篇集『人類対自…

ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』

SF

シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (ハヤカワ文庫FT)作者:ジェイムズ ラヴグローヴ早川書房Amazon映画も含めたシャーロック・ホームズ関連作品はコナン・ドイルによる正典の他に数多くのパスティーシュ、クロスオーバー、二次創作で溢れかえっている…

すべてが成長する時代は終わり、素晴らしい停滞の時代が始まる──『Slowdown 減速する素晴らしき世界』

Slowdown 減速する素晴らしき世界作者:ダニー・ドーリング東洋経済新報社Amazonこの『Slowdown 減速する素晴らしき世界』は、世界人口の増加も、経済の発展も、平均寿命も、負債も、技術革新も、すべての「加速」が終わって減速、あるいは停滞に向か…

押井守による縦横無尽の続篇映画語り──『映画の正体 続編の法則』

映画の正体 続編の法則 (立東舎)作者:押井 守立東舎Amazon20年に『押井守の映画50年50本』という、1968年からはじまり1年に1本、「今の押井守にとって、その年を代表する映画」を語る本が刊行された。押井守は今まであらゆる媒体で映画について語っているが…

宇宙飛行士の著者による、アポロ18号を主軸に据えあり得たかもしれない宇宙開発の歴史を描く宇宙SF──『アポロ18号の殺人』

アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:クリス ハドフィールド早川書房Amazonこの『アポロ18号の殺人』は、アポロ17号でアポロ計画が終わり、その後宇宙開発が停滞に入ってしまった現代とは異なり、アポロ計画が18号まで持続し、さらに米ソの戦いが宇…

人類はいかにして直立二足歩行へと至ったのか?──『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』

直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足作者:ジェレミー・デシルヴァ文藝春秋Amazon人類は高い知性など他の動物にみられない特徴をいくつも持っているが、そうした特徴の中でも最たるものの一つに、「直立二足歩行をしている」が挙げられる。…

サイバー戦争の実態を解き明かす、セキュリティ専門家による終末のシナリオ──『サイバー戦争』

サイバー戦争 終末のシナリオ 上作者:ニコール パーロース早川書房Amazonこの『サイバー戦争 終末のシナリオ』は、サイバーセキュリティを専門とし、《ニューヨーク・タイムズ》紙記者である著者が7年以上の月日をかけてセキュリティ関係者に取材を重ねて「…

ジョン・ル・カレ×クリストファー・プリーストと評された、EUが崩壊したヨーロッパを舞台とするSFスパイスリラー──『ヨーロッパ・イン・オータム』

ヨーロッパ・イン・オータム (竹書房文庫)作者:デイヴ・ハッチンソン竹書房Amazonこの『ヨーロッパ・イン・オータム』は本邦初紹介のイギリス作家デイヴ・ハッチンソンによるSFスパイ長篇となる。本作は西安風邪の蔓延によってEUが崩壊し、みながみな好き勝…

億万長者は金とその影響力によって政治を好き勝手操作する──『ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち』

ダボスマン 世界経済をぶち壊した億万長者たち作者:ピーター・S グッドマンハーパーコリンズ・ジャパンAmazon「ダボスマン」とは、スイスのダボスで行われる世界経済フォーラム総会(ダボス会議)に参加する億万長者たちの呼称である。大勢いるが、有名所では…

『三体』三部作の裏側で起こってきたことに光を当てる、まさにこれが読みたかった! と思える公式スピンオフ──『三体X 観想之宙』

三体X 観想之宙作者:宝樹早川書房Amazonこの『三体X』は、劉慈欣による中国SF最大の話題作である《三体》三部作の、宝樹による公式外伝(スピンオフ)である。公式外伝といっても種類はたくさんあるが、本作が描き出すのは基本的には『三体』の第三部で起こっ…

新型コロナを人類最後のパンデミックにするためには、何をすればよいのか?──『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』

パンデミックなき未来へ 僕たちにできること作者:ビル ゲイツ早川書房Amazonこの『パンデミックなき未来へ』は、ビル・ゲイツによる、気候変動をテーマに地球人類全体が何をして、どこに予算を集中させなければいけないのかを書いた『地球の未来のため僕が決…

想像以上に広くて複雑な深海という世界──『深海学―深海底希少金属と死んだクジラの教え』

深海学―深海底希少金属と死んだクジラの教え作者:ヘレン・スケールズ築地書館Amazon深海は調査が進んでおらず、海底よりも月の表面の方がわかっていることの方が多いとさえ言われる世界だ。だが、近年深海用の潜水艇などの高性能機材が開発され、深海が想像…

今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する

早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメを紹介しよう。早川書房は定期的にセールをやるが、1500点級のセールを前回やったのは去年の6月頭なので、年に一回のセールとなる。これ以上安くなる…