基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2011-01-01から1年間の記事一覧

映像の原則 改訂版

富野由悠季監督が書いた映像論。これが面白い。基本的にコンテの演出論として、アニメーターに向けて書かれているのですが、ただの視聴者でも充分に楽しめると思います。それだけではなく、「物語」を作ることを志している人にも有用な内容になっている。僕…

幸せな未来は「ゲーム」が創る

本書は500ページを超えていて膨大だがその骨子はシンプルですぐに説明ができる。現実はひどく不完全で、ゲームは現実よりよほど完全で楽しい。 だから我々は「ゲーム」を「現実」に活かすことで「現実」をより完全な、楽しい、幸せな状態へとハッキングす…

預言者ピッピ

預言者ピッピは地下沢中也氏によって書かれた漫画。1巻が出たのは4年前であり、それ以降何の音沙汰もなくなっていたので二巻の発売は(僕の中で)永遠にやってこないのではないかと思われていた。このたび帯に「奇跡の続刊」とあるように、読者の側からす…

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う

素人にもわかりやすくエネルギーとはなんなのかといったことを一から教えてもらえるので、興味があるけど知識はない……という人にオススメしたい一冊。原発があんなことになってしまって、これから考えるべきことはよりどりみどりだがまずはエネルギー問題を…

トトロのぬいぐるみの思い出

『となりのトトロ』は思わぬ副産物も生みました。ぬいぐるみが大ヒットしたのです。いま「思わぬ」といいましたが、実際、このぬいぐるみは映画の公開から二年もたってから商品化されたものでした。映画製作者サイドがあらかじめ興行との相乗効果をねらって…

ジブリの哲学――変わるものと変わらないもの

ジブリでプロデューサーをやっている鈴木敏夫さんの本。そこらじゅう、色々な媒体で書かれた文章を一冊に編集しなおした本。全部書きおろしもしくは語りおろしかと思ってわくわくして読み始めたら、過去の文章ばかりですわ失敗かと思ったが、面白すぎてどう…

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

今を去ること五億四三〇〇万年前、今日見られる主要な動物グループのすべてが、いっせいに硬い殻を進化させ、それぞれ特有の形態を持つにいたった。しかもそれは、地史的にみれば一瞬に等しい期間で起こった。これこそ、動物進化におけるビッグバン、史上も…

市民科学者として生きる

原子力事業、原子核研究所勤務を経て有志で集まった原子力資料情報室の設立に参加し、人生の大半を通して原子力にかかわってきた高木さんの自伝のようなものが、本書です。内容をまったく知らずに読み始めたので、はじめは「市民科学者というのは、市民一人…

月の珊瑚

奈須きのこ新刊。といっても文章量としては極僅かで、普通に読んだら1時間もかからずに読み終えてしまう。文章は読んだ時のイメージを重視して書かれているように思える。朗読CDと同梱で売られており、朗読ありきの物語だからだ。奈須きのこはこんな綺麗な…

『これはペンです』をより良く楽しむための二冊

『これはペンです』という不思議なタイトルは小説家の円城塔先生の新刊。『これはペンです』と『良い夜を持っている』の中編二つで構成されていて、前者は芥川賞の候補にもなっている。円城塔といえば何を言っているのかわけがわからない作品を書くことで有…

“知りたい情報”がサクサク集まる!ネット速読の達人ワザ

思えばネットの情報をどのようにして集めるのか、といった本はあまり見たことが無いですが、本書はそのような一冊です。いちお、僕もニュースサイトのようなものをやっているので読んでみたのですがこれがなかなか為になる。ま、基本的には入門書なので、RSS…

デザインセンスを身につける

デザインとは何なのかといった基本的なところが本書を読んでようやく腑に落ちた。たとえば本書では何度も出てくるTwitterのアイコンの話。 このアイコン、結構自分の好きなキャラクタ、自分のうちの犬なんかにしている人が多いと思います。が、たとえ軽い気…

気違い部落周游紀行

いやはやタイトルでひいてしまうかもしれないが、これがめっぽう面白い。少しでも興味が持てるのであれば読んで損はないでしょう。タイトルから想像する限りでは、アフリカとかの奥地にある原始人みたいな特殊な習慣を持った部落をまわって面白おかしく紹介…

これはペンです

円城塔先生の新作。芥川賞を賛否両論の末惜しくも逃した「これはペンです」と「良い夜を持っている」の中編を二つ収録している。正直芥川賞がどうとかはどうでもいい、凄い本だった。文章がキレているのはいつも通りだが、久しぶりに円城塔先生が普通のそこ…

賭けの考え方

賭け事は嫌いだけれども、賭けについて書かれた本は好きだ。 人生に偶然の出来事はつきものであり、勝ち負けに必ず偶然が絡む賭け事は偶然といかにして付き合ったらいいのかを教えてくれる。本書は賭け事の中でも主にポーカーについて書かれた本だ。しかし戦…

鬼物語

傾物語で真宵ほとんど出てこないやん、これじゃ忍物語だよ、と言ったかどうかはもうあんまり覚えてないが本書は傾物語と対になっている、補完されている。時系列上もそのまま続いているし、今回はむしろ「これじゃあ鬼物語じゃなくて傾物語だよ」という内容…

清涼院流水の小説作法

タイトルそのまま、清涼院流水先生の小説作法。本気で清涼院流水先生に小説の書き方を習おうと思っている人はいないだろう。 先生は自身の作品を小説の枠外にある「大説」と名付けているぐらい現代の小説の「ルール」からは外れている作家である。本書のまえ…

内部被曝の真実

一冊の本としての完成度は低いが今はこれでいい。 東京大学アイソトープ総合センター長(放射線の除染などに数十年関わっている専門家)の児玉龍彦氏が7/27日衆議院厚生労働委員会での発言・質疑応答が元となっている一冊。ほとんどそのまま文章化してい…

つぶやきのクリーム the cream of the notes

森博嗣先生の新刊。 発想の原点とも言える「呟き」が100個と、その補足で一冊の本になっている。 ブログの内容を方針転換しようかと検討してしまうほど身に痛い話も多々あった。 もう散々森博嗣先生については書いてきているので、目次だけ引用。……しよう…

恥知らずのパープルヘイズ −ジョジョの奇妙な冒険より−

あの上遠野浩平があのジョジョを小説化すると聞いて胸が沸き立たないファンがいるだろうか。 ましてや西尾維新がその後に続き、舞城王太郎が後詰で控えていると聞けば、僕のような全ての作家のファンである人間には嬉しくて仕方がない。一方で心配もあった。…

ゼロ年代の想像力

文芸批評といったものを毛嫌いしている僕ですが 本書はたいへん楽しめました。良かった一つは問題設定がキチンとしていること。 ゼロ年代の想像力というタイトルが示すとおり、ゼロ年代という新しい想像力が発揮されている場に適当できる批評が存在していな…

密室入門

「なぜ山(エベレスト)に登るのか?」 ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで訊かれた登山家ジョージ・マロリーは、こう答えた。 「そこに、それがあるからだ」 ミステリ作家への架空の質問に答えよう。 「なぜ密室を書くのか?」 「そこに、それがないか…

日本人の9割に英語はいらない

なるほど。 ちゃんと計算で「なぜ9割なのか」に対しての答えが出されている。 ただあまりにもざっくりとした計算でこれで納得する人がいるのかどうか疑問だけど……。「じゃあどれだけちゃんとした計算ならお前は納得するんだ」と聞かれると黙ってしまうので…

3・11の未来――日本・SF・創造力

執筆陣をみていただければわかると思うのだが、 これでもかというぐらい豪華。 序文の小松左京氏はこれが最後に発表された文章であるし 著名なSF作家も揃っている。 押井守までいる。 内容もがちがちの評論と、 SF作家、物語作成者ならではの視点が ちょうど…

いますぐ書け、の文章法

とかくこの世は文章法の本が数多く出版される。 なぜか、といえばそれだけ多くの人が文章力が欲しいと思っているからだし、 ぶっちゃけ文章法の本を読んでも効果が上がらないからである。 しかし勘違いしてはいけないのは、文章法の本に書いてあることは決し…

少女不十分

いまもっとも新刊を心待ちにしている作家は何を隠そう西尾維新である。 驚異的なスピードで作品を発表し続けているが、毎度毎度その内容の尖りっぷりに驚いてしまう。その驚きが楽しくて、いつしかいちばん新刊が楽しみな作家になっていた。作品ごとに方向性…

トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン

トランスフォーマーシリーズ3作目にして最終作。 順調に1作目よりも2作目が、2作目よりも3作目がつまらなくなっていてここで終わってよかった。普段は極端につまらなかった物については何も書かないのだが今回はなんとなく書いておこう。僕は何よりも飽…

最新脳科学でわかった 五感の驚異

SF作家の円城塔先生がこれはすごいと書いていたのを読んで、読んでみた。 脳科学系の本は数多くあるが、僕が読んできた中でも屈指の出来。この本自体で新しい知見があるというわけではないが、ばらばらにちらばった脳に関する実験とその結果の数々を一つ一つ…

がまんできない人のための 真の忍耐力養成ドリル

これはなかなか素晴らしい本だ。だいたいのことは正しく忍耐を発揮することで達成されるという考え方にまったくその通りだと頷いてしまった。痩せたければ食べなきゃいいのだし良い大学に入りたければしの後の言わずに勉強を人よりも頑張ればいいのだ。「忍…

ガープの世界

人はどのようなルートをたどればこのジョン・アーヴィングが書いた『ガープの世界』という本にたどり着くのだろう。出版されて二十年以上が経過した今、この本に辿り着く為にはいくつかの幸運な偶然が必要だろう。なぜこんな事を書くのかというと、この小説…