基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ミステリ

孤島に聳えるオメガ城へと6人の専門家+一人のジャーナリストが集められる、森博嗣最新ミステリィ長篇──『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei's Last Case』

オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case (講談社ノベルス)作者:森博嗣講談社Amazonこの『オメガ城の惨劇』は、有料会員サービスへと移行したメフィストで目玉として連載されていた森博嗣による小説にエピローグを追加した長篇小説に…

二人組の作家エラリー・クイーンがどのように小説を書いてきたのか、その愛憎入り交じった過程について──『エラリー・クイーン 創作の秘密』

エラリー・クイーン 創作の秘密: 往復書簡1947-1950年作者:ジョゼフ・グッドリッチ国書刊行会Amazonこの『エラリー・クイーン 創作の秘密』は、二人組の小説家であった伝説的ミステリ作家エラリー・クイーンの執筆が具体的にどのように成し遂げられてきたの…

七つの作中作を通して殺人ミステリを数学的に定義しようと試みる本格ミステリ──『第八の探偵』

第八の探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:アレックス パヴェージ発売日: 2021/04/14メディア: Kindle版この『第八の探偵』は、7つもの作中作が入り乱れるイギリス作家による本格ミステリである。著者アレックス・パヴェージは本書がデビュー作となるが、異…

数学を通してミステリの自由に触れる、華文青春本格ミステリの傑作──『文学少女対数学少女』

文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:陸 秋槎発売日: 2020/12/03メディア: Kindle版この『文学少女対数学少女』は前漢時代の中国を舞台にした本格百合ミステリ『元年春之祭』や学園百合ミステリ『雪が白いとき、かつそのときに限り』の陸秋槎に…

二人殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった世界で起こる連続殺人事件を描き出す特殊設定ミステリ──『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり作者:斜線堂 有紀発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版本書は、メディアワークス文庫から『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビューした斜線堂有紀による、二人以上の人間を殺すと天使によって地獄に引き摺りこまれるようになった…

孤独な少女の人生を描く、全米500万部の話題に劣らぬ内容を伴った超ベストセラー──『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニの鳴くところ作者:ディーリア・オーエンズ発売日: 2020/03/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この『ザリガニの鳴くところ』は著者ディーリア・オーエンズが70歳になってはじめて執筆小説であると同時に、またたく間に全米500万部、2019年のアメリ…

誘拐された我が子を救うためには、別の誰かの子どもを誘拐しなければならない特殊な「連鎖誘拐」状況を描き出す一級のサスペンス!──『ザ・チェーン 連鎖誘拐』

ザ・チェーン 連鎖誘拐 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:エイドリアン マッキンティ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2020/02/20メディア: 文庫ザ・チェーン 連鎖誘拐 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:エイドリアン マッキンティ出版社/メーカー: 早川書…

世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』

世界樹の棺 (星海社FICTIONS)作者:筒城 灯士郎,淵゛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/11/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この『世界樹の館』は、『ビアンカ・オーバーステップ』という作品で衝撃のデビューを飾った筒城灯士郎の最新作である。ビアン…

技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』

ベーシックインカム作者: 井上真偽出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見るベーシックインカムと言うと、普通は全国民に一律3万なり10万なりといった一定額を定期的に振り込み続ける、最低給付保障をさす言葉…

日本の新本格ミステリに傾倒した著者による、もう二度と戻ってくることのない青春が蘇るような本格学園華文ミステリ──『雪が白いとき、かつそのときに限り』

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,中村至宏,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る前漢時代の百合ミステリで(僕の)度肝をぬいた『元年春之祭』の陸秋槎による学…

SFミステリアドベンチャーゲームの快作──『AI:ソムニウムファイル』

AI: THE SOMNIUM FILES(アイ: ソムニウム ファイル) -Switch 【CEROレーティング「Z」】 (【予約特典】スペシャルサウンドトラック~REVERIES IN THE RaiN~ 同梱)出版社/メーカー: スパイク・チュンソフト発売日: 2019/09/19メディア: Video Gameこの商品を含…

タイムループ&人格入れ替わり殺人ミステリ──『イヴリン嬢は七回殺される』

イヴリン嬢は七回殺される作者: スチュアート・タートン,三角和代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見るタイムループ物のミステリィとか完全に大好きなやつなので、この『イヴリン嬢は七回殺される』がそ…

極上の華文ミステリィ短篇集──『ディオゲネス変奏曲』

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: 陳浩基,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/04/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る著者は警察小説『13・67』で一躍日本で名を馳せた陳浩基であり、本書は著者による全17篇を収…

みすぼらしい探偵に落ちぶれたアドルフ・ヒトラーを描く、歴史改変奇譚──『黒き微睡みの囚人』

黒き微睡みの囚人 (竹書房文庫)作者: ラヴィ・ティドハー出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/01/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見るヒーロー物の要素と第二次世界大戦以後の戦争を統合して描いた、ギーク&ポリティカルとでもいうような『完璧な夏…

世界中のギャングから命を狙われる拳銃使いの親子──『拳銃使いの娘』

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)作者: ジョーダン・ハーパー,鈴木恵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/01/10メディア: 新書この商品を含むブログを見る『メンタリスト』の脚本家として知られるジョーダン・ハーパーの第一長篇がこの『拳銃使いの…

怪奇幻想小説の傑作──『ピクニック・アット・ハンギングロック』

ピクニック・アット・ハンギングロック (創元推理文庫)作者: ジョーン・リンジー,井上里出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る本書は『ピクニックatハンギング・ロック』という大ヒット映画の原作…

無数のフィクション・キャラクターが入り乱れるホームズ・パスティーシュ──『モリアーティ秘録』

モリアーティ秘録〈上〉 (創元推理文庫)作者: キム・ニューマン,北原尚彦出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/12メディア: 文庫この商品を含むブログを見るモリアーティ秘録〈下〉 (創元推理文庫)作者: キム・ニューマン,北原尚彦出版社/メーカー: …

二つの事件が密接に絡み合う極上のフーダニット──『カササギ殺人事件』

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)作者: アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るカササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)作者: アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭出版社…

恒星間宇宙船で起こる密室大量殺人事件──『六つの航跡』

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 文庫この商品を含むブログを見る六つの航跡〈下〉 (創元SF文庫)作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出…

存在しないものを奪い返す──『兄弟の血』

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アンデシュルースルンド,ステファントゥンベリ,ヘレンハルメ美穂,鵜田良江出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/19メディア: 文庫この商品を含むブログを見る兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・…

華文ミステリにして重い百合──『元年春之祭』

元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/05メディア: 新書この商品を含むブログを見る華文ミステリである。著者の陸秋槎さんは現在金沢に住んでいるようだが、本自体は普通に中国語で書かれ、刊行さ…

サウス・セントラル・ロサンゼルスのシャーロック・ホームズ──『IQ』

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ジョーイデ,熊谷千寿出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/06/19メディア: 文庫この商品を含むブログを見る日系アメリカ人であるジョー・イデによる『IQ』は、黒人を主人公に据え、『ベイカー街の脳をサウス・セントラル…

十年単位でじわじわと広まり、浸透していくような感動が──『ψの悲劇 The Tragedy of ψ』

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/05/09メディア: 新書この商品を含むブログを見るGシリーズ第11作目。はじまったのが2004年だから、もう14年目になる。途中で長い作中での時間・関係性の流れを表…

連続殺人鬼の娘は、サイコパスなのか?──『善いミリー、悪いアニー』

善いミリー、悪いアニー (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アリランド,国弘喜美代出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見る九人の児童を殺害した連続殺人鬼、ルース・トンプソンはその娘の告発によって逮捕された…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者による、あまりにも無茶苦茶な探偵小説──『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』

ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所 (河出文庫)作者: ダグラスアダムス,Douglas Adams,安原和見出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/12/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るNetflixに『私立探偵ダーク・ジェントリー』というドラ…

人を殺しに、少年たちは二〇〇〇マイルの旅に出る──『東の果て、夜へ』

東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ビルビバリー,熊谷千寿出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/09/07メディア: 文庫この商品を含むブログを見る麻薬斡旋所で見張り役を任されていた15歳の少年イーストは、ふとした油断から警察のガサ入れを許…

墜落するプライベートジェット、生き残った二人のヒーローが直面する現実──『晩夏の墜落』

晩夏の墜落 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ノア・ホーリー,川副智子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/07/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る晩夏の墜落 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ノア・ホーリー,川副智子出版社/メーカー…

ゾンビが跳梁跋扈する世界で発生する密室殺人──『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』

わざわざゾンビを殺す人間なんていない。作者: 小林泰三,YKBX出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2017/06/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る「全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら」という展開を大真面目に描く『失われた過…

図書館から借り出される、書物としての探偵──『書架の探偵』

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: ジーンウルフ,青井秋,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『書架の探偵』はジーン・ウルフによる最新刊である。本国ではいつ頃刊行されたのか…

救う側は誰が救ってくれるのか──『われらの独立を記念し』

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)作者: スミス・ヘンダースン,鈴木恵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/06/08メディア: 新書この商品を含むブログを見る本書『われらの独立を記念し』はスミス・ヘンダースンの長篇デビュー作。79年から81年に…