基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

SF

連日連夜爆破テロが起きるバグダードの日常を、名もなきフランケンシュタインの怪物が駆ける、中東✕SF──『バグダードのフランケンシュタイン』

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バグダードのフランケンシュタイン作者:アフマド・サアダーウィー,柳谷 あゆみ発売日: 2020/10/26メディア: 単行本この『バグダードのフランケンシュタイン』は、アラビア語からの翻訳、しかもシェリーの『フランケンシュタイン』の流れを汲む物語である。SF…

究極の雰囲気ゲー、傑作サイバーパンクゲーム──『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』

store.steampowered.com IGN Japanから原稿依頼があり今度サイバーパンクについての大きめのコラムを書く予定があるので、昔やった『VA-11 Hall-A』を思い出すためにプレイし直していたんだけど、これがおもしろいよなあ。尋常ではないぐらいに「ノベルゲー…

キャメロンがスピルバーグ、ノーラン、リドリー・スコットらに聞く!──『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』

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SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座作者:ジェームズ・キャメロン発売日: 2020/09/30メディア: Kindle版この『SF映画術』は、『ターミネーター』や『アバター』など数々のSF映画をとってきたジェームズ・キャ…

自由に自分の幸福度を決められる時、医者はそこに上限を設けるべきだろうか?──『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』

闇の脳科学 「完全な人間」をつくる (文春e-book)作者:ローン・フランク,仲野 徹・解説発売日: 2020/10/14メディア: Kindle版闇の脳科学ってどゆこと? 闇の脳科学があるってことは光の脳科学もあるのか? とか「完全な人間」ってなんだ?? 中田敦彦か?? …

不死を得た世界に、新たな神が現れる。フランス作家による未来への警告──『透明性』

透明性作者:デュガン,マルク発売日: 2020/10/15メディア: 単行本この『透明性』は、セネガル生まれのフランス人作家マルク・デュガンによる長篇小説である。本書が長篇のフィクションとしては本邦初紹介作となるが、これまで13作の小説を刊行していて、映画…

イスラエルのSFを集めた、恐ろしく質の高い傑作アンソロジー──『シオンズ・フィクション』

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 (竹書房文庫)発売日: 2020/09/30メディア: 文庫この『シオンズ・フィクション』は、イスラエルSFの傑作16篇を集めたアンソロジーである。訳者の一人である山岸真さんが本の雑誌などで凄い凄いと書いていたので期…

第二次世界大戦で枢軸側が勝利することで、日本合衆国が爆誕した世界を描き出すロボ・バトル物、三部作が完結!──『サイバー・ショーグン・レボリューション』

サイバー・ショーグン・レボリューション (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:ピーター トライアス発売日: 2020/09/17メディア: 新書この『サイバー・ショーグン・レヴォリューション』は、第二次世界大戦で枢軸側が勝利し、日本合衆国が爆誕。しかも日本合衆…

時間旅行が当たり前になった世界特有の精神病理を描き出す、時間SF✕ミステリ──『時間旅行者のキャンディボックス』

時間旅行者のキャンディボックス (創元推理文庫)作者:ケイト・マスカレナス発売日: 2020/09/10メディア: Kindle版この『時間旅行者のキャンディボックス』はケイト・マスカレナスのデビュー作にして、時間旅行が当たり前に存在する世界での様々な精神的な病…

予知能力を持った一人の女性の人生を2043年まで描きあげた『クラウド・アトラス』著者による幻想文学──『ボーン・クロックス』

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ボーン・クロックス作者:デイヴィッド ミッチェル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『ボーン・クロックス』は、19世紀から第二次世界大戦前、1970年代に現代ロンドンと幅広い年代&場所&職業の人間を通して一枚の複雑な絵を描きあげた『クラウド・…

続きがでなくて悲しかった最近のSFたち

25日発売のSFマガジン2020年10月号、ハヤカワ文庫SF50周年号で、50周年を記念して渡邊利道さん、鳴庭真人さんと僕の3人で座談会をやっています。SFマガジン 2020年 10 月号発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌あまり明確なテーマはなくざっくばらんに最近のハ…

あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』

宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF)作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネッ…

タイポグラフィがどのようにSF映画の物語に寄与しているのか?──『SF映画のタイポグラフィとデザイン』

SF映画のタイポグラフィとデザイン作者:デイヴ・アディ発売日: 2020/08/18メディア: 大型本この『SF映画のタイポグラフィとデザイン』は、まさにその名の通りにSF映画に存在するタイポグラフィとデザインに集中して取り組んだ一冊である。大型本で、所狭し…

基礎科学の重要性──『「役に立たない」科学が役に立つ』

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「役に立たない」科学が役に立つ作者:エイブラハム・フレクスナー,ロベルト・ダイクラーフ発売日: 2020/07/29メディア: 単行本この『「役に立たない」科学が役に立つ』はプリンストン高等研究所のエイブラハム・フレクスナー(1866-1959)、ロベルト・ダイクラ…

2019年の傑作日本SF短篇がこの一冊に! 竹書房から新生した《ベスト日本SF》シリーズ──『ベストSF2020』

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べストSF2020 (竹書房文庫)発売日: 2020/07/30メディア: 文庫12年に渡って日本SF短篇の中から傑作をよりすぐって編集されてきた東京創元社版の年間日本SF傑作選が昨年終了してしまった。だが、その後を引き継ぐのがこの『ベストSF2020』! 刊行は東京創…

史上もっとも偉大な科学予測の試みとクラークに評された、科学と人類の未来について論じた先駆的名著──『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』

宇宙・肉体・悪魔【新版】――理性的精神の敵について作者:J・D・バナール発売日: 2020/07/17メディア: 単行本この『『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』』は、X線結晶構造解析のパイオニアであり分子生物学の礎を築いたと言われるJ・D・バナールによ…

地上で最後の一人となった女性による、美術と哲学と狂気の内面世界を描いた実験小説──『ウィトゲンシュタインの愛人』

ウィトゲンシュタインの愛人作者:デイヴィッド・マークソン発売日: 2020/07/17メディア: Kindle版デイヴィッド・マークソンによるこの『ウィトゲンシュタインの愛人』は、何らかの理由で地球上で最後の一人になった女性が、淡々とその生活と過去のことを記し…

フランケンシュタインからジキル博士にモロー博士、ホームズまでが混交するごった煮エンタメの傑作!──『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』

メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:シオドラ ゴス発売日: 2020/07/16メディア: Kindle版この『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』はアメリカ在住作家のシオドラ・ゴスによる第一長篇に…

『三体』読んだらこれを読めと手渡せる、現代中華SFを概観できるアンソロジー──『時のきざはし 現代中華SF傑作選』

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時のきざはし 現代中華SF傑作選作者:江波,何夕,糖匪,昼温,陸秋槎,陳楸帆,王晋康,黄海,梁清散,凌晨,双翅目,韓松,吴霜,潘海天,飛氘,靚霊,滕野発売日: 2020/06/26メディア: 大型本最近中国SFが盛り上がっている。『三体』が売れてる(全部合わせて30万部突破。単…

VRの父がインターネットの黎明期を通して「あらためて我々はどこへ向かうべきなのか」と問いかけてみせた一冊──『万物創生をはじめよう』

万物創生をはじめよう――私的VR事始作者:ジャロン・ラニアー発売日: 2020/06/18メディア: 単行本この『万物創生をはじめよう』は、最初期のVR技術の探求、起業者であり、VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる自伝的な一冊である。幼少期からはじまり、VR…

意識のアップロードを望むか?──『幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost?』

幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost? WWシリーズ (講談社タイガ)作者:森博嗣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版講談社タイガで刊行中の、森博嗣によるWWシリーズ『キャサリンはどのように子供を産んだのか』に次ぐ第…

あの『三体』の続篇がついにきた! すべてのスケールがアップし、人類の命運をかけた”終末決戦”が描かれる超傑作!──『三体Ⅱ 黒暗森林』

三体Ⅱ 黒暗森林(上)作者:劉 慈欣発売日: 2020/06/18メディア: Kindle版ほとんどの日本人にとって馴染みのない「中国の小説」そして「SF」であるにも関わらず刊行当初から飛ぶように売れ、13万部も突破した劉慈欣による中国のSF三部作『三体』! 本作『三…

史上初の三年連続ヒューゴー賞を受賞した超弩級の破滅SF──『第五の季節 破壊された地球』

第五の季節 〈破壊された地球〉 (創元SF文庫)作者:N・K・ジェミシン発売日: 2020/06/12メディア: Kindle版アメリカの女性作家N・K・ジェミシンによるこの『第五の季節』は、史上はじめて三年連続でヒューゴー賞を受賞したThe Broken Earth三部作の第一部…

テクノスリラーの傑作『アンドロメダ病原体』の正統続篇にして、ド直球のSFとして拡張してみせた快作──『アンドロメダ病原体-変異-』

アンドロメダ病原体-変異- 上作者:マイクル クライトン,ダニエル H ウィルソン発売日: 2020/05/26メディア: Kindle版テクノスリラー&SFの傑作マイケル・クライトンの出世作『アンドロメダ病原体』の、別の著者による正統的な続篇がこの『アンドロメダ…

サイエンスとファンタジィの融合を描くネビュラ賞、ローカス賞受賞のファンタジィ長篇──『空のあらゆる鳥を』

空のあらゆる鳥を (創元海外SF叢書)作者:チャーリー・ジェーン・アンダーズ発売日: 2020/05/09メディア: 単行本この『空のあらゆる鳥を』はアメリカの作家チャーリー・ジェーン・アンダーズによるファンタジィ小説で、ネビュラ賞長篇、ローカス賞ファンタジ…

第40回日本SF大賞を受賞した《天冥の標》が2巻まで無料公開されているから全力でオススメする。

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天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)作者:小川 一水発売日: 2013/01/25メディア: Kindle版2020年、第40回の日本SF大賞(日本のSF賞。小説以外の媒体も対象)を小川一水《天冥の標》と酉島伝法『宿借りの星』が受賞した(対象期間は2019年)。どちらも別の角…

仕事をする必要がなくなった世界で、仕事とは何かを問う野崎まど最新SF──『タイタン』

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タイタン作者:野崎 まど発売日: 2020/04/22メディア: 単行本(ソフトカバー)今はGW真っ最中にコロナが重なって働いていない人もいるだろうが、我々の大半は働かなければ生き残れない。酸素を吸わないと生きていけないように、働かないと機能的に生き残れな…

『半分世界』の石川宗生による極上の奇想短篇集──『ホテル・アルカディア』

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ホテル・アルカディア作者:石川 宗生発売日: 2020/03/26メディア: 単行本この『ホテル・アルカディア』は、第7回創元SF短編賞を受賞し、奇想短篇集『半分世界』で東京創元社からデビューした石川宗生さんの集英社からの最新作。『半分世界』は、吉田大輔氏が…

韓国作家チョン・セランによる、異能力を持った保健室の先生を軸にしたほのぼの学園もの──『保健室のアン・ウニョン先生』

SF

保健室のアン・ウニョン先生 (チョン・セランの本)作者:チョン・セラン発売日: 2020/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この『保健室のアン・ウニョン先生』は韓国でホラー、ファンタジー、SFと様々なジャンルの作品を横断しながら作品を発表しているチ…

『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集──『人間たちの話』

人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)作者:柞刈 湯葉発売日: 2020/03/18メディア: 文庫『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集がこの『人間たちの話』である。小説はだいたい人間の話をするものだから「人間たちの話」と題がついている──わけではなく、本書の中…

数学と物理学と哲学が交錯し、どこまでもスケールする超遠距離恋愛SF──『不可視都市』

不可視都市 (星海社FICTIONS)作者:高島 雄哉発売日: 2020/03/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この『不可視都市』は知性に関する3つの定理を解き明かす過程で「物理的に世界を変質させていく」様を描き出した、『ランドスケープと夏の定理』でデビューし…