基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ファンタジー

何が起こってもおかしくない〈原野〉から呪いが生まれる世界で、唯一呪いを解ける少年の冒険を描き出す異世界ファンタジイ──『呪いを解く者』

呪いを解く者作者:フランシス・ハーディング東京創元社Amazonこの『呪いを解く者』はジュブナイル系ファンタジイ長篇の名手フランシス・ハーディングの最新邦訳作にして、呪いとそれを解きほぐすことをテーマにした異世界ファンタジイだ。ハーディングのこれ…

《竜のグリオール》シリーズ最終巻にして、ファンタジィの醍醐味がぎゅっと詰まった長篇ドラゴン・ファンタジィ─『美しき血』

美しき血 竜のグリオールシリーズ (竹書房文庫)作者:ルーシャス・シェパード竹書房Amazonルーシャス・シェパードの代表作のひとつ、《竜のグリオール》シリーズの最終巻が『美しき血』として本邦でもついに刊行となった。最終巻といってもこのシリーズは長い…

物理術師から幻術師まで、大きく異る方向の天才魔法使いが6人集められ、最終的に排除する1人を決める、ファンタジー×SF長篇──『アトラス6』

アトラス6 上 (ハヤカワ文庫FT)作者:オリヴィー ブレイク早川書房Amazonこの『アトラス6』は著者オリヴィー・ブレイクがロースクール在学中にセルフパブリッシングで刊行したのち、爆発的に人気が出てAmazonPrimeでのドラマ化も決定している話題のファンタ…

《ウィッチャー》ワールドの原点とその本質的な魅力を味わえる、入門にうってつけの一冊──『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』

ウィッチャー短篇集1 最後の願い (ハヤカワ文庫FT)作者:アンドレイ サプコフスキ早川書房Amazonポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによるファンタジィ小説シリーズ《ウィッチャー》は、小説も世界的なベストセラーであるが、本作を原作としたゲーム…

科学と魔法が混交した世界を見事描き出してみせた、ゲーム原作のNetflixアニメシリーズ──『アーケイン』

www.netflix.com 『アーケイン』を観た。ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』を原作とするNetflixのアニメ作品で、第一シーズンが配信されている。今月配信がスタートし『イカゲーム』を抜き去って各国でランキングの一位をとるなど盛り上がっているようだ。…

動物の言葉を話す男と古代のおとぎ話を忘れた近代社会が対立する、エストニア発の傑作ファンタジィ──『蛇の言葉を話した男』

蛇の言葉を話した男作者:アンドルス・キヴィラフク河出書房新社Amazonこの『蛇の言葉を話した男』は、エストニアで歴代トップ10に入るベストセラーに入り、フランス語版も大ヒットして14ヶ国語に翻訳されたファンタジィ長篇である。帯には、『これがどんな本…

厳重に階層が固定されたミツバチの社会を蜂視点で描き出す、神話的なディストピア文学──『蜂の物語』

蜂の物語作者:ラリーン・ポール早川書房Amazon週刊少年ジャンプにはこれまで様々な打ち切り漫画が生まれてきたが、僕がその中でも最も打ち切りがショックだったのが、マキバオーなどで知られるつの丸による『サバイビー』だった。ミツバチを主人公に、その生…

数万の兵力に匹敵する能力者同士が世界の覇権をめぐってしのぎを削る、てんこもりのファンタジー能力者戦記!──『隷王戦記1 フルースィーヤの血盟』

隷王戦記1 フルースィーヤの血盟 (ハヤカワ文庫 JA モ 7-1)作者:森山光太郎発売日: 2021/03/17メディア: 文庫この『隷王戦記』は、時代小説大賞を2018年に『火神子 天孫に抗いし者』で受賞しその後メディアワークス文庫だったり朝日新聞出版だったりとぽんぽ…

17世紀のイギリスを舞台にシャーマンキング的能力を持った少女が生存を賭けて奮戦するファンタジイ──『影を呑んだ少女』

影を呑んだ少女作者:フランシス・ハーディング発売日: 2020/06/22メディア: 単行本この『影を呑んだ少女』は『嘘の木』や『カッコーの歌』で主に児童文学方面から高い評価を受けているフランシス・ハーディングによる三作目にして最新邦訳である。フランシス…

史上初の三年連続ヒューゴー賞を受賞した超弩級の破滅SF──『第五の季節 破壊された地球』

第五の季節 〈破壊された地球〉 (創元SF文庫)作者:N・K・ジェミシン発売日: 2020/06/12メディア: Kindle版アメリカの女性作家N・K・ジェミシンによるこの『第五の季節』は、史上はじめて三年連続でヒューゴー賞を受賞したThe Broken Earth三部作の第一部…

資本主義の中に取り込まれてしまった最後の竜を描く、最高の現代ファンタジィ──『最後の竜殺し』

最後の竜殺し (竹書房文庫)作者:フォード,ジャスパー発売日: 2020/05/28メディア: 文庫この『最後の竜殺し』は昨年、人口の99%以上が冬眠する極寒の世界をファンタジック&リリカルに描き出してみせた『雪降る夏空にきみと眠る』で(僕の)喝采をさらっていっ…

サイエンスとファンタジィの融合を描くネビュラ賞、ローカス賞受賞のファンタジィ長篇──『空のあらゆる鳥を』

空のあらゆる鳥を (創元海外SF叢書)作者:チャーリー・ジェーン・アンダーズ発売日: 2020/05/09メディア: 単行本この『空のあらゆる鳥を』はアメリカの作家チャーリー・ジェーン・アンダーズによるファンタジィ小説で、ネビュラ賞長篇、ローカス賞ファンタジ…

「錬金術」というファンタジィ設定ががっつりロジックと絡み合い、高いレベルで両立しているファンタジィ✕ミステリィ──『錬金術師の密室』

錬金術師の密室 (ハヤカワ文庫JA)作者:紺野 天龍出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2020/02/20メディア: Kindle版この『錬金術師の密室』は『ゼロの戦術師』で電撃文庫からデビューした紺野天龍の早川書房からの刊行作。『ゼロの〜』や次作『エンドレス・リ…

『ゲド戦記』や『闇の左手』のル・グインによる、最後のエッセイ──『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』

暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ作者:アーシュラ・K・ル=グウィン出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2020/01/25メディア: 単行本ル・グインは何をおいても『闇の左手』や『ゲド戦記』の、類まれなSF作家・ファ…

全長一マイルにも及ぶ巨大な竜がかつて支配した町を描き出す、至高のドラゴン・ファンタジィ──『タボリンの鱗』

タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集 (竹書房文庫)作者:ルーシャス・シェパード出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/12/26メディア: Kindle版この『タボリンの鱗』は全長1.6kmにも及ぶ巨大な竜をめぐるファンタジィ奇譚が集まった中短篇集『竜のグリ…

『ギルガメシュ叙事詩』から『叛逆航路』まで、神話、SF、幻想、ファンタジィ中心の最高のブックガイド!──『世界物語大事典』

世界物語大事典作者: ローラミラー,巽孝之,Laura Miller,越前敏弥出版社/メーカー: 三省堂発売日: 2019/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『世界物語大事典』はすごい本だ! この世界には様々な本が存在するが、その中でも「僅かなりとも…

世界的なファンタジィ・サーガの傑作五部作、ついに完結──《ウィッチャー》

ウィッチャーI エルフの血脈 (ハヤカワ文庫FT)作者: アンドレイ・サプコフスキ,川野靖子,天沼春樹出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/08/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るウィッチャーV 湖の貴婦人 (ハヤカワ文庫FT)作者: アンドレイ…

身体を重ねるたびに夢で訪れることができる街の地図が完成に近づいていく──『パリンプセスト』

パリンプセスト (海外文学セレクション)作者: キャサリン・M・ヴァレンテ,井辻朱美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るこの『パリンプセスト』は《孤児の物語》シリーズや『宝石の筏で妖精国を旅した少…

人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』

雪降る夏空にきみと眠る (上) (竹書房文庫)作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る雪降る夏空にきみと眠る (下) (竹書房文庫)作者: ジャスパーフォード,Jasper…

言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』

方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション)作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る言葉によって綴られた幻想の架空都市──とお題が出されれば、幻想文学フ…

多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説のワンダーランド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』

ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書作者: ジェフ・ヴァンダミア,朝賀雅子出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2019/05/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』は、『全滅領域』(これを原作とし…

この世に存在する思考のすべてが記録された図書館──『叡智の図書館と十の謎』

叡智の図書館と十の謎 (中公文庫)作者: 多崎礼出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2019/02/22メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『叡智の図書館と十の謎』は多崎礼さんが中央公論新社の『小説BOC』に連載していた一〇の短篇小説をまとめたものにな…

異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける子どもたちを描き出す、ファンタジィ三部作

不思議の国の少女たち (創元推理文庫)作者: ショーニン・マグワイア,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見る「不思議の国」や「ナルニア国」のようなファンタジックな世界から”帰還した後”の少年少…

幻想文学短篇集の傑作──『言葉人形』

言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選) (海外文学セレクション)作者: ジェフリー・フォード,谷垣暁美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るホラー、SF、ファンタジィに幻想と多彩な傾向を持った…

アイデンティティが問われ続ける極上のチェンジリング・ファンタジィ──『カッコーの歌』

カッコーの歌作者: フランシス・ハーディング,児玉敦子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/01/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る嘘をつけばつくほど、真実を宿した大きな実をつけるという「嘘の木」をめぐる傑作歴史ミステリ『嘘の木』の…

音が支配する世界を描くディストピア音楽文学──『鐘は歌う』

鐘は歌う作者: アンナ・スメイル,山田順子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る『鐘は歌う』は、〈大崩壊〉によってロンドンの橋という橋が落ち、人々の目はみえなくなり鼓膜は破れ、それをきっかけと…

異世界からの”帰還後に”苦悩を抱き続ける少女たち──『不思議の国の少女たち』

不思議の国の少女たち (創元推理文庫)作者: ショーニン・マグワイア,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『不思議の国の少女たち』とは不思議な題名だが、読み始めてすぐに納得がいった。これは…

10人の人間とライオンと馬に取り憑かれた魔術師──『魔術師ペンリック』

魔術師ペンリック (創元推理文庫)作者: ロイス・マクマスター・ビジョルド,鍛治靖子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るロイス・マクスター・ビジョルドの代表作の一つ、五つの宗教や魔術が存在する世界…

全長1.6キロメートルにも及ぶ巨大な竜──『竜のグリオールに絵を描いた男』

竜のグリオールに絵を描いた男 (竹書房文庫)作者: ルーシャス・シェパード,内田昌之出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2018/08/30メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るなぜこの世界には竜がいないのか。他の何がなくてもいいから、竜だけは──”恐竜…

ル=グウィンによるギフトのギフト──〈西のはての年代記〉

ギフト 西のはての年代記? (河出文庫)作者: アーシュラ・K・ル=グウィン,谷垣暁美出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2011/02/04メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (15件) を見る普段このブログでは比較的新しい本について書いているの…